使用する部屋や空間に適した建具(たてぐ)を取り入れたい
室内の開口部(出入口)に用いる室内建具(ドア・扉・戸)。間取りプランにもよりますが、新築やリフォームの際には、リビングや寝室、子供室、洗面やトイレなど、いくつかの建具を選ぶことになるでしょう。グレイッシュな木目カラー6色をラインアップ。内蔵されたドアストッパーやゆっくり静かに閉まるソフトモーションなども設定。[ラテオ] LIXIL
開閉方法 開き戸(ドア)や引き戸、折れ戸など
室内建具を開閉方法で分けると、主なものは、開き戸(ドア)、引き戸、折れ戸の3つ。開き戸タイプが一般的ですが、日本の住宅では馴染みのある、引き戸のスタイルも見直され、商品バリエーションも豊富になってきています。■開き戸(ドア) 多く用いられるスタイル。天井までの高さを持つタイプも
木目柄がナチュラルな雰囲気を醸し出すドア。軽く触れるだけでドアの開け閉めができる、高齢者や力の弱い方でも使いやすいレバーハンドルを設定。[ハピア プレミア 片開き 1Sデザイン 〈メープル柄(ミルベージュ)〉] DAIKEN
プランニングの際には、ドア(扉)の開閉部分のスペースが必要なので、使い勝手に合わせてサイズ、内開き外開き、左右どちらを吊元とするかなどを検討すること。出入りの動線を妨げず、危険のない開閉方法とすることが重要です。
たとえば、ドア(扉)を取り付ける部屋が廊下や階段付近に接している場合は、廊下を歩く人にぶつからないように内開き(部屋側に開く)とする、もしくは、 出入口そのものの位置に工夫する、などの配慮が必要でしょう。また、開き方によって、照明スイッチがドアで隠れてしまい使いづらい、部屋に置く家具にぶつかってしまう、といった失敗も聞かれます。具体的な動き(動線)イメージして、プランニングすることが大切でしょう。
■引き戸 デザインも豊富に。部屋が広く使え、通風も確保しやすい
光や気配を通す引戸。和のテイストを取り入れたデザインも魅力。[ベリティス 内装ドア 引戸専用デザイン HC型 施工例] パナソニック エコソリューションズ
和室に隣接していたり、狭い空間で開き戸を設置できない場合に用いる建具、というイメージのあった引き戸ですが、最近では、デザインバリエーションも増え、和洋問わず、多く用いられるようになってきています。
スタイルは、1枚の戸を左右どちらかを壁に沿って滑らせて開閉する「片引き戸」、壁の中に引き込む(扉が収納される)「引き込み戸」、2枚の引き戸を左右にどちらでも、移動させ開閉することができる「引き違い戸」、左右にひき分けて開閉する「引き分け戸(両引き戸)」などがあります。敷居のついたタイプと、上吊りで床面のレールが不要な吊戸がみられます。
設置するための壁面は必要ですが、戸を横にスライドさせるため、開き戸のように前後に開閉スペースがとられないので、部屋が広く使えること、開け放して通風を確保しやすいこ と、開閉動作が楽なこと、などがメリット。扉を開けておけば、部屋を連続させて使用出来たり、空間に変化を持たせることも可能でしょう。
■折れ戸 折り込んで開閉するタイプ。廊下幅の狭い場所などに
開閉スペースは開き戸の約1/3。開閉スペースを確保しにくい場所、他のドアと干渉する場合などに適する。[ベリティス 内装ドア プレミアム仕様 折れ戸 PA型 DB型 全開時 施工例] パナソニック エコソリューションズ
選ぶ際には、開閉のしやすさなどの使い勝手はもちろん、幼いお子さんがいる場合などは、指挟みなどを防ぐ工夫が施されているかどうか、なども確認しておきたいポイントです。
表面素材(仕上げ・枠など) 多くみられるのは樹脂シート仕上げ
室内建具の素材には、樹脂シート仕上げ(貼り)、突き板仕上げ(貼り)、無垢材などの木質系のほか、枠にアルミなど金属系を用いたタイプも揃っています。■樹脂シート仕上げ(貼り) 天然木の風合いを感じるようなタイプも
基材(合板、集成材、単板積層材など)の表面に、木目などの模様を印刷した樹脂やオレフィン、紙などのシートを張ったもの。柄やデザインが豊富、お手入れがしやすいのもメリットでしょう。最近では、天然木の風合いを感じさせるようなタイプも多くみられます。
■突き板仕上げ(貼り) 肌触りや木目の美しさが魅力
天然木を薄くそいだ板(単板)である突き板(つきいた)を、合板、集成材、単板積層材などの基材に接着し、塗装を施し仕上げたもの。肌触りのよさや木目の美しさなどが魅力です。
■無垢材 風合いや味わいが大きな魅力
深みのある素材感、風合いが、長く使っているうちに味わいが出てくるのが特徴でしょう。
■アルミ枠 光を取り込むデザインが多くみられる
シンプルでシャープなアルミフレームを用いたタイプも。採光パネルや木質パネルと組み合わせたものもみられます。
アルミならではのスリムなフレームが特徴。扉いっぱいに光を採り込むデザイン。[アルミドア S1 ブラック/スクリーンパーティション 間仕切 Sタイプ ブラック] YKK AP
機能ドア 防音、通風、ペット仕様など
一般的な居室に用いられる建具のほかに、さまざまな機能や特徴を持つ商品も揃っています。■音に配慮した扉 音楽室に用いるものだけでなく生活騒音を防ぐタイプも
一般的な住宅のピアノ室やリスニング室などに向く、防音ドア商品の種類もデザインも豊富になってきています。また、本格的な機能を持つものだけでなく、生活騒音が気にならない程度の遮音・防音効果のある建具も。寝室や書斎、子供室やトイレなどに向いているでしょう。開き戸(ドア)だけでなく、引き戸タイプもみられます。
■通風・換気が可能な扉 ルーバーや欄間などを組み合わせ風の流れをつくる
家の中に、風の通り道を確保することができる建具も多くみられます。ルーバーなどの通風機能を組み込んだり、欄間を組み合わせることが可能なタイプであれば、扉を閉めたままでも風を取り込むことが可能です。湿気がたまりやすいトイレや洗面室だけでなく、部屋の中の気配を感じることができるので、子供室に取り入れるケースもみられます。
■ペットドア 行き来できる、小さなくぐり戸がついたタイプ
室内で飼う犬や猫など、ペットが自由に動き回れるように、ペット専用の小さなくぐり戸がついているドアもあります。ペットが出入りするたびにドアを開閉する必要がないのがメリットです。
ペットが自由に出入りできるくぐり戸付きのリビングドア。くぐり戸がぴったり閉まるマグネットのストッパー付き。[ペットドア] DAIKEN
トイレが使用中か、ひと目でわかるような工夫がされたもの。小さなあかり窓や表示錠が取りつけられているタイプです。換気用のルーバーや換気口などが設置されているものも。最近では、開口部を広く確保できる引き戸タイプも多く用いられるようになりました。
■ユニバーサルデザイン 開閉しやすさ、出入りのしやすさを重視
高齢の方や小さなお子さんでも使いやすく、安全に使えるような工夫を建具も増えています。2枚(3枚)連動タイプの引き戸は、車椅子でも開閉しやすいもの。床面がフラットになる上吊りタイプは、車椅子も通りやすく、つまづく心配もないでしょう。
また、わずかに開けば自動で全開し自動で閉まる機能、自動でゆっくりと閉まる機能(ソフトクローズ機構)を持つ扉は、閉め忘れを防ぎ、閉まる時の衝撃音を押さえることも。高齢者の方の部屋や開け放しが気になるダイニングやキッチンなどに向いています。
デザイン傾向 天井高までのスタイル、ナチュラルな雰囲気
最近の建具デザインの傾向は、シンプルな中にもナチュラルな雰囲気を感じさせるものが多くみられます。壁に馴染むようなタイプだけでなく、印象的なデザイン性を持たせたものも。ガラス(熱処理されたステンド調のガラスやチェッカーガラス、乳白ガラスなど)や樹脂素材などを扉に組み込んだデザイン、色味やデザインを床材や階段などと、トータルコー ディネートすることが可能なシリーズも提案されています。また、ドアノブやレバーは、さまざまなタイプから選べることができる商品が多くみられ、デザイン性だけでなく、開閉しやすい工夫が施されたものもみられます。たとえば、軽く触れるだけで開閉できる機能を持つタイプであれば、高齢者や力の弱い方でも使いやすいでしょう。
リフォーム向けのタイプ 既存の開口部に後付けでき、施工しやすい
壁工事などが不要なため、半日で折戸に交換。開き戸に比べると開閉スペースが約1/2に。 [かんたんドアリモ 室内折戸 ドアリモ室内折戸 採光 居室施工例] (左)リフォーム前 (右)リフォーム後] YKK AP
室内建具は、間取りプランやインテリアと大きく関係するアイテム。使い勝手や空間イメージへの希望など、設計段階から早めに伝えておくことが大切です。また、間仕切り建具や収納扉などとも同時に検討することも必要でしょう。もちろん、カタログだけでなく、ショールームで素材感や使い勝手を実際に確かめることは重要なポイント。実際に操作してみて、重さや開閉音なども確認しておくようにしましょう。
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