三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』第4巻
巨乳美女だけど対人能力に欠ける古書店主・栞子(しおりこ)さんと、本が読めない店員・大輔のコンビが本にまつわる謎を解く。第4巻の副題は「栞子さんと二つの顔」。シリーズ初の長編です。東日本が大規模な震災に見舞われてからしばらく経ったある日。大輔が店で作業をしていると、電話がかかってきます。栞子さんそっくりの声の主は、篠川智恵子。10年前に失踪した、栞子さんの母でした。ずっと海外にいたが、仕事のために帰ってきたというのです。
大輔から智恵子の話を聞いて、栞子さんはこんなことを言います。
今日と同じ明日はないかもしれない、とわかったとき、人は大きな決断をする。今回の物語も、ある人の決断から動き出すのです。大きな震災が起こると、マニアが蔵書を手放すことがあると言われています。実際、十六年前の阪神淡路大震災の後、まとまったコレクションが市場に出たそうです。今回の震災ではどうなるか分かりませんが、大口の買い取りを期待して戻ってきたのかもしれません。
愛人関係にあった男性から別荘と膨大な江戸川乱歩コレクションを相続した来城慶子。彼女はあることを条件に、貴重な蔵書をすべて譲るといいます。その条件とは、男性が遺した特注の金庫を開けること。乱歩作品をこよなく愛した男性はどこに鍵を隠し、どんな言葉を暗証文字に設定したのか。調査を進める栞子さんと大輔の前に、立ちはだかったのはなんと智恵子でした――。