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思わず引き込まれるデビュー作! 新庄耕『狭小邸宅』(2ページ目)

ブラック企業で働く主人公の過酷すぎる毎日に思わず引き込まれる。第36回すばる文学賞受賞作『狭小邸宅』を紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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 やっと家は売れたけれど

「僕」は新しい配属先で、5年以上も全支店で売上げトップだったという、豊川課長に出会います。課長は淡々と「僕」に退職を勧め続ける。すごく不気味です。汚い言葉で罵られるより、「僕」は追いつめられます。

それでも会社を辞められない「僕」が、やっと家を売ることに成功するところは爽快です。客を買う気にさせるテクニックをつかみ、課長にも評価されます。ただ、本書は仕事を通して主人公が成長していく「お仕事小説」ではありません。

入りたくて入ったわけじゃないということで、「僕」はどこか会社をあなどっていたのだと思います。ところが、一度自分の存在を承認されたことで変わっていく。その変化は社会に適応したということなのか、それとも――。「僕」のその後を想像すると暗澹とした気持ちになりますが、吸引力のある小説です。

 

 

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