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思わず引き込まれるデビュー作! 新庄耕『狭小邸宅』

ブラック企業で働く主人公の過酷すぎる毎日に思わず引き込まれる。第36回すばる文学賞受賞作『狭小邸宅』を紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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新庄耕『狭小邸宅』

ライターになる前、1年にも満たない期間ですが、中古住宅や新築建売住宅の売買を仲介する会社で事務のアルバイトをしていたことがあります。売上のノルマはあるけれど、大手だったからか支店長の人柄か、わりと和やかな雰囲気でした。『狭小邸宅』に描かれている不動産会社は、わたしが知っているところとは全然ちがいます。でも、とても生々しい。

主人公は、ろくに就職活動もせず、苦しまぎれに不動産屋の営業マンになった「僕」。入社して1年ちょっと経ちますが、連日残業して休日を返上しても家を売ることができず、上司に罵倒される日々。職場の過酷な状況が、いやというほどリアルに描かれています。

例えば、新入社員の木村が電話営業をするシーンは衝撃的でした。
 営業マンが一件でも多く電話をかけるために、あるいは、気持ちが折れて電話をかけることから逃げないように、受話器と手をガムテープで巻きつけることはよくあった。が、包帯で巻いたかのように、頭にまでガムテープが巻かれているのは、これまで見たことがない。
売買契約をとる意味で「殺す」という言葉を使い、売れない営業マンは人間扱いされないブラック企業。成績が上がらない「僕」は戦力外通告を受けて別の店舗に異動するのですが……。
 
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