リフォームやカスタマイズを約半数がやってみたい
賃貸住宅では、「入居者が室内に棚を付けるなどの改装をすることは禁じられている」というのが常識でした。入居者には「原状回復」義務があるからです。つまり、退去時には借りたときの状態に戻す必要があり、そのための費用を負担することになっていました。しかし、賃貸といえども、入居者が自分の好みで手を加えたいというニーズがあることもたしかです。リクルートの「2011年度賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査」(首都圏版)によると、入居後のリフォーム・カスタマイズ実施経験率は5.4%ですが、実施意向(「原状回復しなくてよい/敷金がひかれない」ならばやってみたい+「原状回復を求められる/敷金がひかれる」としてもやってみたい」の割合は46.0%と半数近くに及んでいます。
最近では、壁を大きく傷付けることなく取り付けられる棚、簡単にきれいにはがせる壁紙といった、カスタマイズしやすいパーツが商品化されていますが、これもカスタマイズニーズの表れといってよいでしょう。
部屋の壁をDIYで塗り替えてみると…
塗り替える前(左)と、壁を塗り替えた後(右)では、かなり印象が変わる
借り手市場の打開策という側面も
賃貸住宅のカスタマイズを認める背景には、賃貸住宅業界が借り手市場になっていることが挙げられます。特に老朽化した賃貸住宅は借り手が付きづらく、改装費用もばかになりません。こうした築年の古い賃貸住宅で、全面的な改装を可能するケースが増えています。一方、多くの賃貸住宅を所有する賃貸会社やオーナーは、競争優位性のために、壁紙や部材などに限定してカスタマイズを可能にするケースが増えており、そのための専属のアドバイザーを用意するといった事例も見られます。こうした様々な背景や事情があることから、カスタマイズに要した費用は、借り手側が負担する場合もあれば、一部または全額を貸し手側が負担する場合もあり、カスタマイズといってもその内容には違いがあるというのが現状です。
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