単純明快な家の形は地震に強い
地震が起こった時や強い風が吹いた時、建物は縦方向や横方向に強い力を受けます。また、そのような力がかからなくても、常に上から下に荷重はかかっていて、常時2階の荷重は1階に流れ、またそれを地盤面に流しています。
・地震や風で力が建物にかかった時に建物が踏ん張って耐えること
・上下方向の力の流れがスムーズであること
以上のことが「耐震性の高い家」の条件になります。その条件を満たすために、建物の形は「単純であるほどよい」と考えられています。
【目次】
1.地震に強い単純明快な家の形とは?
2.地震に強い家の平面形状:長方形
3.地震に弱い家の平面形状:凹凸型
4.地震に強い家の立面形状:長方形で中央に揃う
5.地震に弱い家の立面形状:オーバーハンチング
6.地震に弱い形の家は弱点補強が肝心
7.増築時に家の形が変わりやすいので要注意
地震に強い単純明快な家の形とは?
それでは「単純明快な形」とはどのような形をいうか図で確認しましょう。単純明快な形とは、長方形を代表とする「整形」をいいます。この長方形に近いシンプルな形が「地震に強い形」です。反対に凹凸の多い形は複雑な形となります。地震に強い家の平面形状:長方形
【図1】は平面形からみた「単純明快な形」と「複雑な形」の例です。平面形状とは、建物をある程度の高さで横にスパッと切り上から見た図のことです。【図1】の左側「単純明快な形の例」では、長方形が2つ組み合わさった形をしています。このように、建物の平面をいくつかの長方形に分割できるようであれば、今回定義する単純明快(=シンプル)な形と考えてよいでしょう。
地震に弱い家の平面形状:凹凸型
【図1】の右側「複雑な形の例」を見ると、凸凹が多い形をしています。こういう複雑な形状をしていると、例えば横からの力を受けた時に、家が一体となって踏ん張れず、ある部分に力が集中してそこにねじれが生じ、その部分から損壊が始まるなど、弱点になってしまう可能性があります。地震に強い家の立面形状:長方形で1.2階が中央に揃う
次に立面形状について見ていきましょう。立面形状とは、建物を正面からみた形を言います。立面形状も平面形と同じで、長方形に近いシンプルな形が地震に強い形です。例えば1・2階が全く同じ形の総2階になっている形は、全体でみればシンプルな長方形ですので単純明快な形と言えます。
しかし2階部分の面積が1階部分より小さく、壁面がセットバックする場合は、【図2】の左側に示した「単純明快な形」のように、2階部分ができるだけ1階部分の真ん中にのっているほうが地震に耐えやすい、バランスの良い形となります。
地震に弱い家の立面形状:オーバーハンチング
【図2】の右側、複雑な形の例をご覧ください。2階部分は1階部分より面積が小さくなっていますが、2階は1階の中央ではなく、片側に偏ってのっています。また、赤マルで囲まれた「い」の部分は、上に建物があるのに真下の部分に柱や壁がありません(下図も参照)。このように、2階の荷重を受ける1階部分がない形(=オーバーハンチング)は、上の荷重がスムーズに下に流れず、建物のどこかに負担をかけています。大きな地震が起きた時、ここが弱点となり倒壊・崩壊を招く危険性を持っています。
地震に弱い形の家は弱点を補強しよう
以上に述べてきたように、平面形状・立面形状が複雑で、地震時に踏ん張りがきかない形をしているとわかったら、弱点となる部分を補強しましょう。補強の方法は、例えば通し柱や耐力壁を増やして変形に強くするなど、その建物の状況によってさまざまです。適切な補強をすることで、地震に強い家にすることができます。耐震補強は構造設計を専門とする建築士事務所などの専門家に相談してください。
増築時などに家の形が変わりやすいので要注意
今回は、地震や風に耐える建物の形は「シンプル」で「単純明快」な形だとご説明いたしました。これから家を新築する人は、全体的な形が地震に強い形をしているかチェックしてみてください。また、増改築をする際にこのバランスが崩れやすくなるので、増改築の計画を立てるときも、全体的な形がシンプルであるかどうかも合わせて確認するようにしてください。【関連記事】
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