では、売ってしまうという選択は?
今、物件を所有しているオーナーさんは「今日も売らない」という選択をしました。そう、なにもしていなくても「売らずに所有する」という選択をしたのです。
これまで、論じてきましたように、「人口は減る」のです。加えて物件は経年劣化するのですから、「今、満室でも来年は空室が出るかもしれない」という賃貸経営の環境です。人口が右肩上がりのかつての時代よりも、投資としてはリスクが上がっています。
「ずっと所有する」という選択をするならば、現状空室課題があるならば、手を打たねばなりません。これまで述べたように、「家賃を下げ、価格競争力をあげ、稼働率をあげる」という方法もありますが、収益力は下がります。滞納リスクや住人のマナー悪化なども考えられます。「修繕して、物件の競争力を維持する」「収益力が悪くなった上物を建て替える」という方法もあります。こうした方法については、vol.3で述べさせていただきます。
一方、「売却する」という方法もあります。将来性が見込めない物件を売却し、より収益性が高い物件に買い替える。あるいは、より規模の大きい物件にして勝負をかけるという手もあります。仮に、不動産投資に懲りたのであれば、売却資金を別の資産運用に向けるという選択も有効かもしれません。
売却して別の場所を選択する
「先祖代々の土地をそんな簡単に手放すわけにはいかない」というお話もよく聞きます。そのお気持ちは大切で、だとすれば「売らない」という前提で手を尽くしましょう。しかし、不動産会社に任せっぱなしで、何年も物件を見たこともないとするならば、そして、採算性があまりにも悪いのであれば、売るということも選択肢に加えてみましょう。
「空室率が○%になったら売ろう」「利回りが銀行金利を下回るようなら売却も考えよう」「売却益が出る間に相場を見て売ろう」など、「どうなったら売るのか」を考え、「そこまで行かないから、売らないと決断した」という経営戦略を立ててみましょう。欧米に比べ、日本人は契約時に解除する場合の記述を盛り込まない癖があります。いかなるビジネスにも、契約終了のタイミングはあるものです。「どうなったら、手放すのか」という戦略立案は、決して後ろ向きなことではありません。
逆に、不動産会社に丸投げにしていて、物件の修繕やメンテナンスなども怠り、賃料も言われがまま下げ、収益悪化となってしまい、空室が多いまま売ろうと思っても買い手もつかず、もうアパートマンション経営が立ち行かなくなり、建てなおすにも立ち退き料などかかってしまうという悪循環は避けなければなりません。
不動産は地域格差が激しい商材です。同じ間取りの物件でも、首都圏と地方では価格も賃料も入居率も利回りも違います。入居率は立地で大きく異なり、「地域格差の拡大」はどんどん広がります。だとすれば、「よりよい立地条件でアパートマンション経営する」という選択肢も、戦略として持つことを考えていきたいものです。
ベストな相談相手となりうる管理会社を選びましょう
こうした悩みは、自分だけで抱えていくことは危険なことです。
オーナー同士のコミュニティや専門家とのやりとりも有効です。同じような悩みを抱えている人は全国にいます。大家さんの会(https://oya-san.jp/)には、オーナー同士の掲示板があり、様々な悩みを投稿することが可能です。また、土地活用ドットコム(http://www.tochikatsuyou.com/)のように専門家のブログが読め、資料請求ができるサイトもあります。
一方、やはり地元の信頼できる管理会社に日頃から相談に乗ってもらうことがいいでしょう。最近では、空室改善を提案し、実績をあげている不動産会社も存在します。株式会社市萬(http://www.ichiman.co.jp/) の西島社長は、昨年12月に『「築20年超え」のアパート・マンションを満室にする秘訣』という本を出版し、この分野でのアマゾンでの書籍売上で1~2位を誇っています。地域ごとに信頼できる管理会社を見極め、継続的に相談していくことが大切かもしれません。
それでは、「今日は売らない」と経営判断をしたオーナーは、賃料改定以外にどんな手を打つべきか。vol.3で、じっくり論じさせていただきます。