迫る「財政の崖」でも意見が合わなかった民主・共和両党
膨大な財政赤字を抱えるアメリカはどうなる?
これによりアメリカ経済は非常に大きな打撃を受け、GDPはマイナスになり、失業率は大幅アップになると予想されていました(「財政の崖」の詳細は「アメリカ経済を震撼させる「財政の崖」とは?」をご覧ください)。
このまま財政赤字が膨らんでも減税を延長するか、あるいは財政赤字削減のために景気に悪影響が出ても増税にするかの決断が求められていたわけです。
ここにおいて民主・共和両党の隔たりが相当大きく、共和党は当初「増税は一切認めない」というスタンスで、一方、民主党は「25万ドル(約2200万円)以上の所得者には増税を」というスタンスでした。
ドタバタの末に通過した法案
当初目標としていたクリスマス前の合意に至らず、結局12月31日になってようやく「40万ドル以上の個人、45万ドル以上の世帯には増税」ということで合意した両党。そのまま2013年が明けて一旦は「万事休す」にも見えましたが、その直後に合意した法案が提出され、米議会の上院は89対8という大差で可決。一夜明けた1月1日に、残った下院が法案の審議を開始しました。下院では共和党が多数のため、この法案の否決もあるのではないかという危惧も浮上。共和党議員のかなりの数が法案に反対・異議を表明し、一時はかなり可決が危ぶまれましたが、257対167という差で可決。なんとか下院も通過し、その後大統領の署名を経て成立。1月1日に法案が成立し、これで危機は去ったかに見えました。
先延ばしにされた歳出削減
しかし、今回合意したのは増税面だけ。これは「財政の崖」と見られていた問題の、一部分でしかありません。残った問題、例えば歳出削減については、これまでの歳出を2ヶ月間そのまま続ける法案を提出して、先送りにされました。ということは、2ヶ月後の2月末には、今度は歳出削減問題で、また「財政の崖」が襲ってきます。これは「財政の崖」第2部となり、再度もめることになるのは間違いありません。
債務上限の問題まで残る
それともう1つ、「債務上限」の問題が残っています。これは米政府の発行する国債が、法定上限額まで到達してしまうという問題です。この問題は2011年夏にも起こり、当時も民主・共和両党がなかなか合意することができず、8月2日までに法案を通さないとアメリカ史上初のデフォルトにも発展するという事態になりました。
このときは最終的に8月2日ギリギリで法案が通過したのですが、結局タダでは済みませんでした。8月5日には格付け会社のS&Pが米国債を史上初となるAAAからAA+へと格下げ、それに合わせて8月は世界的に株価が大暴落しています。
このとき引き上げた新しい上限は、16兆4000億ドル(約1440兆円)という額ですが、実はその額は2012年12月31日をもってすでに到達しています。アメリカ政府は当面の資金を確保するための臨時措置を取っていますが、それも2月中には枯渇すると見られています。
つまり、2月中にまた債務上限を引き上げる法案と通さないと、アメリカはデフォルトしてしまいます。