迫りくる「財政の崖」
アメリカでは地方政府も破たんが続いているほど財政問題は深刻
一方、何千億ドルもの公共投資や減税をしてきたため、財政赤字が膨張し放題。日本のようにGDP200%を超えるところまではいかないまでも、財政赤字は危機的水準に達し、崖っぷちに立たされています。
というのも、2013年が明けると、ブッシュ政権、オバマ政権で実施されたいくつかの減税措置が期限切れとなり、それと同時に強制的に歳出カットをすると決められた法案が実行されるのです。これをアメリカでは「財政の崖」と呼んでいます。
影響を受ける金額は膨大で、減税の終了分だけでも約2000億ドル(約16兆円)に達する見通し。「崖っぷち」に追い詰められたアメリカは、なんとかしないと崖から一気に転落してしまうことにもなりかねません。
GDPマイナス成長の予想も
このまま「崖」から転落すると、アメリカ経済はどうなるのでしょうか? 予定されている減税などがそのまま終了し、かつ歳出の強制削減も実行されると、アメリカ経済はまさに崖から転落するほどのダメージになると予想されています。減税が終了するために個人消費が冷え込み、かつ歳出の削減はさらに景気を冷え込ませる。2013年のアメリカGDPはマイナス0.5%程度にまで落ち込むと予想されています。
7.8%まで下がった失業率も9%に再上昇してしまうと予想され、リーマンショック以来巨額の財政出動で景気を下支えしてきましたが、財政が緊縮されるだけで再び景気が一気に冷え込む危うい状況にあるということを露呈しています。
対抗措置を取れば、再度赤字が膨らむ悪循環
崖からの転落を避けるためには、近いうちに減税の延長など、何らかの対抗措置を議会で通過させる必要があります。いまアメリカは大統領選で盛り上がっているので、対抗措置を取るにしても、大統領選が終わってから。2013年までの時間はあまりありません。大統領選が終わったとしても、民主・共和党の両党がうまく落としどころを見つけ合意できるとは限りません。合意できないと、このままズルズルと行き、崖から転落していきます。
本来はこの問題について、オバマ、ロムニーの両候補が何らかの対策を発表しないといけません。しかし、両候補からはほとんど「財政の崖」について言及がない状況。というのも、財政の崖問題は有権者受けがあまりよくない問題なので、両候補とも話題を避けているとか。何も言われないまま時間だけが過ぎています。
何にしても、減税や歳出の強制削減の停止など対抗措置を取ると、これからまたアメリカの財政赤字が膨らんでいきます。GDPや失業率などは当面いまの水準を維持するか改善されるでしょうが、財政赤字問題を将来に先送りすることになります。