インターネット時代が生んだあふれる情熱と個性
HJリムのベートーヴェン『ピアノ・ソナタ』
ベートーヴェンが力を入れたジャンルの一つがピアノ・ソナタ
時は現代。パリで学ぶ韓国出身の若きピアニスト・HJリムは、熱い情熱で独自の表現を深化させ、コンクールに関心を持たず。母国の両親に見せようとYou Tubeに上げた演奏会の動画が大評判に。なんとレコード会社から声が掛かり、24歳という若さながら大作ベートーヴェンのピアノソナタ全曲でデビュー。正にインターネット時代のシンデレラ・ストーリー!
日本では4つに分売され、最後の第4集(CD2枚組)がこちら。1枚目はゲーテの『ファウスト』から引用した『永遠に女性的なもの - 成熟期』というテーマで24番、27番、30番、31番を収録。理想の女性を求め続けたベートーヴェンの賛美や優しさが際立たされた恍惚とする演奏。
一方、2枚目は『運命』というテーマで『悲愴』、12番、『熱情』、32番を収録。難聴になるなど運命というものを強く意識した作曲家の心の激情を代弁するかのような、推進力と激しさが強烈な演奏。
高尚な作曲家という印象のベートーヴェン像が吹き飛ぶような、とにかく生々しいほどに人間味あふれるベートーヴェン。でも、ただやりたい放題・好き勝手に演奏しているわけじゃない、というのが彼女自身による気合入りまくりの解説を読むと分かる。書簡をはじめ作曲の背景をよく研究し、作曲家の心理を知り、共感し演奏している。恐れ入りました!
「クラシックはちょっと取っ付きにくくって……」という人におすすめしたいし、クラシック好きにとっても新鮮に響く一枚です。
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iTunes(全集より)