素材の厚さの使い分けが絶妙……Marcel Breuer( マルセル・ブロイヤー):『Dining Chair』
ワシリーチェアは金属パイプのフレームに革ベルトを巻き、座や背、肘掛けを構成した斬新なデザイン。
「椅子デザインって何でもありなんだぁ。。。」 ショックと憧れで身体に焼き付いたワシリーチェアのディテールが、この椅子には素材を変えてデザインしていることが伝わってくる。
前脚・後脚・座受ともに厚さ12mmの合板。その脚に巻き付くように3mmの薄さの合板。構造を成し、加重を『受ける』脚部分と適度の『しなり』でクッション性のある座部分、この二種類の合板の組合わせが絶妙である。
座と脚の接点・・・赤丸で囲んだ部分・・・にも、うなってしまう。無造作に取付けているようだが、前後の脚上部のカットの仕方を変え、単調になりがちな接点にリズミカルな動きを与えている。
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奥行400mmの座面の2/3ほどは3mmの薄い合板が、その下の座受け材から合板の厚さ12mmだけ浮いた状態で取付けられている。
ここがこの椅子の秘密部分。この『高さ12mmの空き』が程よくしなり、スポンジやバネなど使用しないで、座面にクッション性をうみだしているのだ。薄くても強度のある合板の利点を生かしているディテール。実際座ってみると見ため硬そうな木板という感じは消え、座面がしなって心地よい。
座面下には厚さ12mmの合板横材が座受板の補強材となり、その厚さ分(12mm)が3mmの座面のしなる隙間なっている。背と座をつなげる背骨はしなりと強度を保つように13.5mmと一番厚みのある成形合板を用いている。(写真をクリックすると拡大されます。)
温かく、柔らかいディテール・・・思わず触れたくなる。
この椅子のもうひとつの特徴が端部である。
薄く平面的になりがちなプライウッドをクルリと曲げ、軽い曲線で止めている。
この曲線が大きすぎても小さすぎてもいけない。
大きすぎると品がなくなり、小さすぎるとシャープになりすぎ神経質な感じだ。『人の手のひらでやんわりと掴めるくらいの柔らかい曲線が思わず触れたくなるんだ!』と、椅子のディテールは教えてくれる。
背を横から見た。上端部はクルリと曲げられ程よい厚さ:57mm。椅子に座って背中をあずけても、椅子をひく時ココを掴んでも、手になじんでちょうど良い。背は厚さ3mm、背骨は13.5mmのプライウッド。
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脚の先端は可愛らしく曲線でカットしている。
薄い板を幾重にも重ねて成形しているプライウッド(合板)の端部は意外ともろい。その端部をアール(曲線)カットすることで割れや剥がれを防止する・・・合理的なディテールデザイン。それにしても、脚の先端がこうして可愛らしくカットされているだけで、温かくて上品!
四本の脚すべての端部が直径45mmのアールカット・・・可愛らしく軽快。人間もそうですが、足元って大事ですね!!
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最後に、次ページにて椅子のデーターをご紹介しよう!