イームズに影響を与えた合板の椅子
Marcel Breuer( マルセル・ブロイヤー):『Dining Chair』
カバ材の白く柔らかい木目と単純な構成が美しい椅子。正面から見ると、まるで一枚の板から切り取られたような椅子である。
今回ご紹介する椅子は、1936年にデザインされたプライウッドの『Dining Chair』。
プライウッド(合板)といえば、かならずイームズのLCWやDCWを思い出すが、この椅子はマルセル・ブロイヤーによってイームズのそれより18年近く前にデザインされたものである。工法や形状からみてイームズに多大な影響を与えたことは明らかなこの椅子。
ボクは最初に見た時、大変驚いた。
というのも、この椅子をデザインしたMarcel Breuer( マルセル・ブロイヤー)は、近代デザインの総本山的存在のバウハウス出身のデザイナー。
マルセル・ブロイヤーといえば、彼を世界的著名なデザイナーに導いた『ワシリーチェアー』・・・・・金属パイプと革ベルトで構成されたアノ椅子だ。ボクにとっても、椅子デザインの世界にのめり込むきっかけとなった忘れられない椅子である。
『ワシリーチェアー』
マルセル・ブロイヤーが当時バウハウスの教授であった画家:ワシリー・カンデンスキーに贈った椅子とのいわれから『ワシリーチェアー』と命名された椅子。
ワシリーチェアーのクロムメッキ(パイプ部分)と革の組合わせは、とても斬新でクール、『これぞ、モダンデザイン!』象徴の旗印・・・マルセル・ブロイヤーデザインの特徴だ。
が、この『Dining Chair』は、まったく違う・・・・・木の温もりと素朴さ、人間的なフォルムに愛着をもつ。
「これが、あのマルセル・ブロイヤーのデザイン?」と目を疑った椅子が『Dining Chair』である。この椅子の秘密が隠されているサイドビュー
サイドビューは、脚と座と背が、『受ける』『しなる』『保つ』という記号のように構成されている。とくにプライウッドの利点を大いに活用したデザインが見えてくる。
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それでは、次ページにてこの椅子の細部をご紹介しよう!