MRの転職

最新製薬業界事情 2012

2012年の製薬業界には2つの大きな変化が見られました。そのひとつは医薬品の卸売企業によるMR業務への本格的な進出です。そしてもうひとつが欧米並みの販売活動規制のスタート。これらはいずれも数年前から兆しがありましたが、そうした変化が「本格化した」という点で2012年は特徴的な年であり、今後MRの転職市場や仕事内容に大きな影響を与える可能性があります。

高橋 俊夫

執筆者:高橋 俊夫

MRの転職ガイド

卸売企業によるMR業務への本格的進出の始まり

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医薬品卸売企業が自社の営業職(MS)にMR認定資格取得を推進。MR資格を持つMS急増の可能性も。

製薬会社で開発・製造された医療用医薬品は、医薬品の卸売企業を経由して医療機関や調剤薬局に販売されます。こうした卸売企業の営業担当者はMS(マーケティング・スペシャリスト、医薬品卸販売担当者)と呼ばれ、業界全体で約2万人います。

MSは各製薬会社のMRと連携をとりながら販売活動を行いますが、医薬品を医療機関や調剤薬局に届ける役割もあります。そのためドクターと会う機会は多く、特に開業医の場合はMRよりもMSの方がドクターと親しいという場合も珍しくありません。

収益性の低下に悩む卸売企業は業務の付加価値を高めようと様々な努力をしていますが、そのひとつがMS業務の高付加価値化です。開業医や調剤薬局に強いMSの利点を活かし、MSにMR認定資格を取得させて製薬会社MRのサポート強化や製薬会社にMRとして派遣することで収益を得ようという取り組みです。

メディセオ社の「AR」による事業展開

そうした卸売企業のなかで最も意欲的にMR業務への進出に取り組んでいるのが(株)メディセオです。メディセオ社はMR認定資格を取得したMSをAR(アシスト・リプレゼンタティブス)と呼び、その数は2012年11月現在で460名にのぼります。さらに2012年12月に実施されるMR認定試験には新たに約1,000名のMSが受験予定だといいます。

メディセオ社ではARによる新しい事業展開として次の3つを挙げています。 ARを契約先製薬会社にMRとして派遣し、契約先製薬会社のMRとして活動する。
  • ARコーディネーター事業
契約先製薬会社との勉強会などをARが主催、奨励する。
  • ARセールス事業
通常のMS業務の傍ら契約先製薬会社の支援品目のプロモーションを行う。

卸売業界のコントラクトMR事業参入のインンパクト

メディセオ社のAR事業のなかで特に注目されるのは「コントラクトMR事業」。同社は2012年に入って製薬会社2社とコントラクトMRの契約を結んだといいます。

コントラクトMR事業はこれまでCSO(Contract Sales Organization:MR派遣およびMR業務受託企業)が独占的に行っており、CSOのコントラクトMR総数は3,500名を超えています(2011年現在:「MR白書2012年版」公益財団法人MR認定センターによる)。

一方、メディセオ社が2012年現在で契約先製薬会社2社に送りこんでいるコントラクトMRの人数は合計しても数十人規模とみられ、コントラクトMR総数から見ればまだわずかです。しかし業界全体で約2万人におよぶMSの人数を考えれば、ARのような人材活用が他の卸売企業にも広がっていった場合、コントラクトMRをめぐる環境は大きく変わっていくことも予想されます。

コントラクトMRの多くは、未経験でMRに転職する異業種の営業職のみなさんです。こうした卸売企業によるMR業務への進出拡大の可能性を考えると、これからMRへの転職を考えている方は、そうした影響が出る前の方がMRに転職できるチャンスは大きいといえるかもしれません。いずれにしても、今後しばらくは卸売企業の事業展開から目が離せません。

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