サラウンド(ホームシアター)が
ビデオを映画に変える!
テレビ、デジタルレコーダーと揃えたら次は<音>ですよね。普段はイヤフォンでスマホや携帯プレーヤーの音楽ファイルを聴いているあなた…。クリスマスに彼女(彼氏?)がお部屋にやって来た時のためにボーナスの中から10万円を割いて、映画や音楽に二人で一緒に酔えるトキメキのホームシアター・システムを選んでみましょう。ホームシアターとは、本当は視聴覚から照明など環境作りまで全てをひっくるめたものを指すのですが、現在の流通業界では<サラウンド>を指すようです。筆者からすると若干違和感を覚えるのですが、今回は一般に通用している意味を尊重して、10万円以内で買えてBDやDVDのサウンドを劇的に改善してくれる製品を探してみましょう。
サラウンドは「包囲する、回り込む」の意味。今日、映画の音声はほとんどがサラウンドを使用しています。サラウンドの歴史を紐解くとそれだけで終わってしまうので今回は止めにしますが、現在の基本はディスクリートの5.1chです。6.1ch、7.1chの映画も多数ありますが、あくまで5.1chが基本と考えてください。
家庭用のサラウンドも共通で5.1chをそのまま6台のスピーカー(スーパーウーファーの0.1chを含む)を散開して再生する方法と、多数のスピーカーを配置するのは大変なのでもっと簡単で合理化した方法で再生する方法の二通りがあります。大手家電量販店など流通業界で<ホームシアター>としているのは主に後者のようですので、映画や音楽ビデオを多数のスピーカーを使わず、臨場感豊かに再現する製品から選んでみましょう。
それぞれ技術と魅力を異にした
パイオニアの二つのホームシアターシステム
パイオニアのホームシアター(サラウンドスピーカーシステム)は全4機種、その中からテレビの前に手軽に設置が出来るバータイプの2機種を聴いてみましょう。オーソドックスな構成のSB550が35,000円、平面振動板のCVTを搭載したHW950が実売価格60,000円、それぞれに特長と魅力があります。
最初に安価なSB550から。4×7cmのセンター、LRを内蔵したバータイプのスピーカーにアンプ、スーパーウーファーを加えた3.1chシステムです。テレビやデジタルレコーダーの音声出力をHDMIで入力してサラウンド再生します。地上デジタル放送のAACだけでなく、ドルビートゥルーHDやDTS-HDマスターオーディオといったロスレス音声にまで広く対応します。
DSP音場機能は、MOVIEにTV DRAMA、ADV.GAME、SPORTS。MUSICに、EX.STEREO、SND.WING、etcを用意。これと別の“バーチャル3Dサウンドモード”を搭載しこれがなかなか効果的。アンプは100WのクラスDデジタルでパワフルですが、MAX(50)近くまで上げていくと流石にクリップします。
さすがに音響メーカーのパイオニアの製品だけにオーソドックスなバランスで鳴りますが、細長いエンクロージャーから前方に向かって音が放射されるため、上下方向の音の広がりに自ずと限界があり、視聴位置とスピーカーの高さを出来るだけ一致させてやる必要があります。つまり、スピーカーをあまり低くセッティングしてはダメ。ステレオモードで聴くCDは滑らかで自然。音にしっかりした実体感があるのが魅力です。
次にSB550の上位機種がHW950 。こちらは2.1chシステムですがオーソドックスなSB550と違い本機には大きな特徴があります。それは、パイオニアが開発した“サウンドウィング”平面振動板HVTをスピーカーに使用していることです。
HVT(Horizontal Vertical Transforming)は一般のスピーカーのように直接リスナーに向かって波動を生み出すのでなく、振動板の横(水平)方向の振幅をリンク機構で縦の振幅に変換して音の波動を生み出します。本機の場合、片面駆動でなく両面駆動としたことで全方向へ音の放射範囲を広げています。これにスーパーウーファーと組み合わせて2ピース構成のシンプルなサラウンドシステムを実現したわけです。スピーカーの外寸は900mm(W)×71mm(H)×93mm(D)ですが、実際にテレビの前にセッティングした印象はスペックほどの存在感を感じさせず軽快そのものです。
CVTは音が上に向かって放射されるため映像との一体感は高いことが特長。映画の場合、本格的なフロントサラウンドの音が左右に回り込む効果はありませんが、この方がむしろ自然に感じられるかもしれません。
CDのステレオを聴いてみましょう。上へ向かって音が出ている感覚はあるのですが、正面に音場が形成され不自然さは感じられません。小さなホールでやや遠くのステージを見つめる独特のステレオイメージ、といったらお分かりでしょうか。
SB550、HW950共にブルートゥースに対応しています。テレビや映画を見ていない時に、スマホや携帯電話の音楽ファイルを無線転送して楽しむことが出来ます。パイオニアの音質補正技術“サウンドレトリバー エアー”を搭載、MP3圧縮音源の帯域を伸長して伸びやかな音質に改善してくれます。
あこがれのBOSEのホームシアター。
10万円を切る価格でキラリと光る存在感
次に定評あるボーズのホームシアター・システムから1機種選びました。
CineMate GS Series2(94,500円)です。テレビやデジタルレコーダーの光デジタル音声出力をサラウンド再生します。再生フォーマットはAACとドルビーデジタルに限定されるので、パイオニアに比べデジタル放送により密着した製品といえます。
スピーカーは左右2ピースペアで小型で音楽再生能力の高いGEMSTONEスピーカーアレイを採用、音声ケーブルの接続の要らないスーパーウーファー“ワイヤレスAcoustimasモジュール”と小型のインターフェースユニットの4ピース構成。
本機はボーズらしい包み込まれるような密度感の高い立体的な音場が魅力。コンパクトながら質感も高く、ゲストへの視覚的なインパクトも十分です。もし、予算に余裕があれば、バータイプでより迫力ある再生の狙えるCineMate1SR(180,600円)をどうぞ。1.1ch構成ですが、反射を利用しているので音が室内の壁に沿って回り込み、包み込まれるような音場を楽しめます。
やや高価だが、音響技術的な
面白さならヤマハのデジタルサウンドプロジェクター
ヤマハのデジタルサウンドプロジェクターから一機種選びました。最新製品のYSP-4300です。
160,000円とやや高価ですが、技術的にワンアンドオンリーな製品。バータイプの本体とワイヤレススーパーウーファーの2ピース構成で本体に小型のスピーカーユニットを22個、両端にウーファー2基を配置し、スピーカーユニットから鋭い指向性の音のビームを発射、壁面反射を利用して7.1chサラウンド音場を生み出します。接続はHDMIを使用します。
本機は新たにワイヤレススーパーウーファーを採用しました。従来は本体をテレビラック内に収納しましたが、今回、テレビの脚を跨いで設置出来る高さ8cmのバータイプに生まれ変わりました。AirWiredでPC音楽ファイルのワイヤレス再生に対応、MP3やWMA等の圧縮音源の音質を改善するミュージックエンハンサーも搭載します。
さて最後に、サラウンドアンプとスピーカーシステムを組み合わせたリアル5.1chシステムを紹介しましょう。
スペースが許せばリアル5.1chを。
映画の見方がその日から変わる
アンプにはソニーの最新製品STR-DN2030 (84,000円)を使用します。
昨季のESシリーズTA-DA3600ES(136,500円)のシャーシ、パワーアンプを流用した製品で、パワー部はディスクリート回路をアルミ基板上に構成してモジュールを使用、広帯域パワーアンプの採用でクラスを超えた高音質が楽しめます。ネットワーク再生も進化、192kHz/24bit5.1ch(WAV、FLAC)まで再生が可能。映像関係は4Kアップスケール回路までを搭載し昨年の製品を買った方が気の毒になる充実度です。これにヤマハの5.1chスピーカーパッケージ NS-P285 (30,450円)を組み合わせます。
コンパクトですが、6.5cmフルレンジユニットを使用。共通のユニットに2.5cmドームトゥイーターを組み合わせたセンタースピーカー、A-YST方式のスーパーウーファーで構成されます。
実売価格を調べるとSTR-DN2030とNS-P285の両方で6.5万~10万円。これで映画館と基本的に同じ音が聴けるのです。たとえ小さなお部屋でも実音源を配置して映画を再生すると、映画の中で音がどれだけ大きな役割を担っているかが分かります。音は映像より早くドラマの変化を描くのです。映画の見方が変わる、といって過言ではありません。