泉修二さんが記す、デザインと社会の50年史
「Design and Society (50年間のデザインと社会)」は、1年1ページで綴る50年間の歴史の章です。それも単なるデザイン専門年表ではありません。「懐かしいあの歌が流行った年にはこんなデザインがあったのか」など社会風俗もひも解き、また各方面のデザインにスポットをあて、より一般の方々にもわかりやすく資料性が高い内容となっています。
1958~1959の出来事。周辺には高い建物等なにもない「東京タワー」竣工時。その年にあの名車:「すばる360」がデザインされた。 (引用:日本デザイン50年、54~55p) |
この章は膨大な作業量も含め、編集で一番骨を折った部分です。「年表博士」こと武蔵野美術大学名誉教授:泉修二さんによる貴重な保存資料をもとにした時代のひも解きとその内容の深さは圧巻。筆者自身も大変勉強になった章です。
先人に学ぶ「ハンド・ドロ-イング」
日本におけるインテリアデザイン黎明期に、その時代をリードしてきた先人の手によるドローイング(スケッチ・パース・エスキース図面・原寸図など)を紹介しています。
新宿OZONEで開催された記念展覧会「ハンド・ドローイング展」(後ほどご紹介します)と同時進行の内容ですが、剣持勇、松村勝男、豊口克平、渡辺力、長大作、新居猛、水之江忠臣、永原浄、山口道夫氏の9名のデザイナーによる「強く」「深く」「豊かな」作品は、デジタル化された情報化時代の今日、新鮮でダイナミックなパワーとなって伝わってきます。
剣持勇氏が東京高等工芸学校時代(20歳)に描いた室内図 (引用:日本デザイン50年、82~83p) |
作品探しでは多くの方にご協力していただきました。関係のご遺族をはじめ、元所員、コレクター、所蔵の方々のご自宅や事務所へ伺い、デザイナーの卓越した技法と人間性あふれる感性で描かれたおびただしい量の作品に出くわす度に感激しました。
本末にある「付録」には感激しますね。この章でご紹介している「剣持勇氏の美しい室内図」と「渡辺力氏のフリーハンドによるトリイスツールの図面」が42cm×56cmの大きさに拡大され、大変貴重な資料としてまたポスターとして楽しむことができます。