建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

都心の住宅は“へそ”のある家がいい! 井上揺子&小高由紀子住

家を建て直すとき、好きな窓からの風景を残したいと思うのは誰しも同じ。井上揺子さん設計の大岡山の家は、公園のケヤキが見える大きな開口部が全体の“へそ”になっています。一方、ビルに囲まれた都心にある小高由紀子さん設計の家では、外の風景を遮断した“井戸”のような空間を内部につくり、それを家全体の“へそ”にしていました。

執筆者:坂本 徹也

「大岡山の家」には“へそ”がある

井上揺子さん設計の大岡山の家は、北側の道路を隔てた場所に小さな児童公園があります。施主の一人であるお母さんは、この公園にあるケヤキが台所から見える風景が大のお気に入りでした。長年住みなれた家の建て直しを依頼された井上さんが最初に思ったのは、「このケヤキを一部として取り込むような家にしよう」ということでした。

そして出来上がった家を訪問してみて、最初に目に入るのは、やはり2階のリビングと娘さんの寝室とをつなぐ広い廊下(というか踊り場のようなスペース)。南北両面がガラスの窓という開放的なこのスペースは、音楽が趣味という娘さんがグランドピアノを置いて演奏できるようにとつくられたそうですが、北面の窓いっぱいに大きなケヤキの緑が飛び込んできます。そして、南面は赤く塗られた木製のスカイガーデン。ちょっとしたゼイタクな空間がぽっと現れた感じがします。

「将来このスカイガーデンに植物を育てれば、南北両面を緑に囲まれてピアノを楽しむ空間が出来上がる。それって、ちょっといいと思いません?」

と井上さん。家の“へそ”というか、この空間のために家のそれぞれのパーツが再構成されたようにも思えるこの家ですが、自分だけの家だからこそそんな発想が許されるというところも建築のおもしろさなのかもしれません。

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