以前はマンション住まいだったFさんは、娘さんが小学校にあがる前に自邸を建てることを決め、おおむね10メートル角の正方形に近い形の約30坪の角地を購入しました。ここは付近に公園やテニスクラブや大使館などもある閑静な住宅地にありながら、賑わいのある一角です。

建築について当初は住宅メーカーにも相談しましたが限界を感じ、以前に建築家を紹介する会社で知ったUAの押尾章治さんに家づくりの夢を託しました。

緩斜面の角地に建つコンクリートの家

外観
コンクリート打放しの壁が立ち上がり一見、要塞のように見える北西側の外観。壁は約10度の角度で傾いている。
外観
西側に面した開放的なガレージと中庭。中庭の床の高さは前を通る路線バスの屋根とほぼ同じ。
玄関
ステンレスとガラスによる玄関のデザイン。靴脱ぎの床はモルタルの金コテ仕上げ。
車庫
ガレージの扉は天井に引き込むオーバースライドドア。北側の窓から隣の地下室を明るく照らす。
個室
ガレージに面した子供部屋。黒い壁柱が寝室と空間を分ける。天井のトップライトから光が差し込む。
個室
寝室の壁と天井の間に仕込まれた間接照明が落ち着いた雰囲気を演出する。

Fさんのお宅は土地が平坦ではなく、緩やかに傾いています。敷地の可能性を検証したところ、東西に約2mという敷地の高低差を利用して西側に半地下のガレージを設ければ、その上を中庭として使えることが分かりました。中庭は平均地盤面の算定上、建ぺい率の計算から除外されるので、建物を道路からセットバックさせずに敷地をめいっぱい有効に利用できたのです。

ここは北側と西側が交通量の多いバス通りに面しています。交差点から眺めるとコンクリートの壁に窓がほとんど見当たらず閉鎖的な印象ですが、実は南西の角の約1/4に青空天井の大きな中庭を設けています。ここから光と風を取り入れることで室内を心地よい環境にしています。

外部と内部を仲介する風車形の黒い壁柱

居間
玄関から続くテレビの背後の階段から1階のリビングに至る。
居間
リビングから中庭を見る。奥にキッチンが続く。
台所
1階の東南側に位置するキッチン。キッチンカウンターとダイニングテーブルはステンレスの一体型になっている。ダイニングチェアも建築家のオリジナルデザイン。
台所
キッチンから階段とリビングのある北西方向を見る。
台所
壁柱と一体になった階段の下はガラス張りになっていて、地下に光を届ける。奥にバング&オルフセンのオーディオセットが見える。

この家の内部には黒く塗装された4つの壁柱があり、3層を貫くようにして立つこの壁柱が構造の要となっています。壁柱を外周の壁から切り離して自立させることで「内部のような外部」と「外部のような内部」が生み出され、これによって室内の各部屋が分けられています。

特に中庭に面した壁柱にはその特徴がよく表れていて、壁柱に続く窓ガラスを開くことで、リビングやダイニングキッチンは壁柱を介して外部の中庭と一体になるのです。

ガラスで囲われた開放的なバスルーム

吹抜け
階段の上のトップライトを見上げる。中庭に面した窓からの光も加わり、室内を明るく照らす。
風呂
子供室からバスルームと洗面室を見る。洗面室には扉は無い。
風呂
壁柱に寄り添うようにバスタブが置かれたガラス張りのバスルーム。背後の階段室からも自然光が入る。
洗面
洗面台のトップはコーリアン(人工大理石)。壁から張り出す収納は鏡をスライドできる。
便所
ミニマルにデザインされた地階の階段下のトイレ。スリット窓から入り込む自然光が室内を明るく照らす。

2階の北東側はバスルームとトイレと洗面が一体となった部屋になっています。ここは特にご主人がこだわった空間で、「できれば2階のフロア全体をバスルームにしたい」とおっしゃったそうです。

その願いを少しでも叶えるべく、バスルームは2面を床から天井までのガラスで囲い、トップライトのある階段の吹抜けに面するように配置して、家の中で最も明るい部屋になっています。

2階はバスルームと子供部屋のみというプライバシーの高い空間なので、ご主人の要望でトイレにも扉がついていません。

内と外をつなぐ中庭

中庭
中庭に構造の要となる黒い壁柱が立ち上がる。壁柱の高さは約6.5m。
中庭
4中庭を囲む壁で四角く切り取られた青空を望む。
中庭
街に開かれた中庭の大きな開口。下側は前を通る路線バスの屋根と同じ高さになっている。
中庭
2階から階段状の中庭を見下ろす。広さは約15.2帖。

この家は外部の中庭を内部空間と一体になるよう囲んでいます。外部に接した部屋では、外部も内部の一部であるかのようになることで,広がりや開放感が生み出されています。気候が良い季節には、中庭でガーデンパーティーも楽しめるそうです。

「建築とは、環境の良さを生かすためのフレームのようなものだと思います。建築を通じて環境の良さが引き出されるのでなくては、建築をつくる意味がありません。風、光、風景の取り入れ方を工夫して、そこにしかない、得難い環境を感じ取り、喜びを見いだせる内部空間をつくりたい。」とおっしゃる建築家の押尾さん。この家はまさにそのポリシーを実現した好例だと言えるでしょう。

[fu-house]
所在地: 東京都世田谷区
構造・規模: RC造 地下1階 地上2階
竣工年月: 2006年6月
敷地面積: 100.39m2
建築面積: 60.06m2
延床面積: 161.30m2
設計・監理: UA/押尾章治
構造設計: 牧野構造計画


押尾章治[UA]プロフィール

「その場所なりの環境をかたちづくっている要素を、すべて拾い上げて考えたい。建築を通じて、それら要素を並べ直し書き換えることで、その場所や地域社会がもっと快適になるようにいつも考えています。」をポリシーに、住宅をはじめ集合住宅や民間や公共建築等を多数く手掛けてきました。


一級建築士事務所UA有限会社
Tel. 044-752-7721
http://www.ua-office.co.jp/

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           押尾章治 [Oshio Shoji]




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