建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

『箱の家に住みたい』の難波和彦氏が設計した家訪問 難波和彦氏

『箱の家に住みたい』という著書もある難波和彦さんが建築した「箱の家--集成材造シリーズ」の第4弾の見学会に行ってきました。「斜線制限によって限られた空間に、最大限の室内空間を確保したコンパクト版“箱の家”です」とは難波さんの弁ですが、外からは想像もつかないほどの大空間のリビングが2階に広がる住宅となっていました。

執筆者:坂本 徹也

住宅=箱であるという発想

難波さんは、著書『箱の家に住みたい』(王国社)の中で、箱の家が現代に誕生する背景をこう書いています。
「これまで住宅の平面構成は、寝室の数とリビング・ダイニングキッチンを示すnLDKで呼ぶのが一般的だったが、そうした呼称は住宅の質とはほとんど関係ないことに、誰もが気づきはじめている。(中略)子供の自立を促すという名目で提案された子供部屋は、せいぜい受験勉強に集中できる空間になるだけで、眼に見えない親子のコミュニケーションを絶ってしまった」

 

 

たしかに私たちは、不動産広告で物件を見るとき、どうしてもアタマから「それって、何LDK?」という見方をしてしまいがち。ですが、ここへきて「家族の人数×LDK」という発想から、家族がふだんどう生活するスペースにするかという原点を見直そうという動きが出てきました。難波さんの言う「箱」とは、まさにこの既成の概念を打破する一室空間を意味しているのです。では、その「箱の家」の具体的な展開とは何か?

(1)ローコストである、(2)コストパフォーマンス〈コスト当たりの性能〉が高い、
(3)メンテナンスが容易、(4)内部が開放的で一室空間的、(5)天井の高い、ゆとりある空間、(6)将来の住まい方の変化に対応できる、(7)単純な箱型のデザイン、(8)コンパクトだが大きく見える

なるほど今回訪ねた下井草の「箱の家41」にも、その思想は脈々と受け継がれているようです。2世帯住宅のため1階こそ仕切のある個室が確保されていますが、2階部分は大きな吹き抜けを持つ一体型の大空間。大きなリビングを中心に、段差をつける形で上に寝室、下に書斎が設けられていますが、壁も天井も目に見える部分はみんな同じ木材を使用しているため、大きな一つの箱の中にいるような気分にさせられます。

 

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