美しさの中に見る作り手の思い
着物は着るものではあるけれど、展示されている作品を見る限り、とにかくその美しさ、そして技術の高さに圧倒され、“見て憧れる”という気持ちがまず先に立ちます。しかし、五代目田畑喜八氏は言います。「華主(かしゅ=着る人)が主役になるようなものを作らなければいけない。着る人を限りなく美しく輝かせることが私達の努めなのです。そしてこれは江戸時代から続くこの家の家訓にもなっています」。
贅をつくし、職人が精魂こめた作品はどれも素晴らしく、それ自体とても価値があります。でも着物はあくまでも、昔から生活の中に溶け込むことで発達し変化してきたもの。それを着ることで、着る人自身を輝かせるものこそが、本物といえるのではないかと思います。
現代を生きる日本女性にとっての着物とは
では、日常に着物を着ることのない現代のライフスタイルにおいて、着物を着る意味とは何なのでしょうか。多くの作品を展示協力している株式会社千總 代表取締役社長の仲田保司氏によれば、「昔と違って、日常に着物を着る機会がない現代のライフスタイルの中で、ハレ の日だけが生き残ってきたのには理由があります。ハレの日というのは、つまり女性にとっての通過儀礼であり、人生の節目。一つの儀礼を通り過ぎ、次のステップに進む。いわば目標でもあるわけです。ですからそれをきちんとお祝いし、その成長を見守る事は本人にとってもその家族にとっても大切な事なのです。普段に着物を着ない今こそ、このハレの日を大切にしていただきたい。」と言います。
現代を生きる日本女性にとって着物を着る事の意味は、こうしたところにあるのかも知れません。
いかがでしたでしょうか。とにかくこれほどのものを一度に見られるのは今だけ。この数少ないチャンスを逃すべからずです。単に「着物は値段が高い」と言うことなかれ。職人が丹精込めた本物の放つそのオーラに「良いものは良い」ときっと納得できるはず。あなたの“見る目”を養う良い機会となること間違いなし!
DATA
目黒雅叙園「百段階段」
開催期間: 2012年9月14日(金)~10月21日(日)
会場: 目黒雅叙園 東京都指定有形文化財「百段階段」
お問い合わせ 03-5434-3140(目黒雅叙園 販売部)