日本シームレス地質図で
新しい地盤、古い地盤を知ろう
最初にお勧めしたいのが独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センターが公表している20万分の1日本シームレス地質図。地形と地質、地盤の固さには関連があり、非常に単純に言ってしまうと新しい地形は低く、軟らかく、古い地形は高く、固い。そのため、この場所がいつ作られたかを知れば、土地の固さの想定がつく。具体的には東京低地や荒川低地など地盤が軟弱な土地は1万8000年前から現在までに作られており、武蔵野台地はそれより昔に作られている。
さて、この地質図だが、パソコンだけでなくスマホ、タブレットPC、携帯のいずれからでも利用できる。画面右下に出てくる方位マークをタップすると現在地にマーカーが立ち、それをタップすると解説文が出てくる仕組み。これを渋谷のハチ公前でやってみたのが画像。渋谷駅周辺はかつて渋谷区役所やNHKのある高台の両側を流れる宇田川、渋谷川の合流地点だったが、表示される地図を見るとそれらしい水色が。この水色部分は1万8000年前から現在までに作られた土地で、その上の緑色部分は約15万年前から7万年前に形成された段丘層。渋谷駅付近で地震に遭遇してしまったら地盤の固いNHK方面に逃げるべし、である。
また、2012年9月にこの記事をアップした後、パソコン版ではこれの5万分の1版という、さらに詳細な地質をチェックできる機能が追加されている。台地と低地の境や、低地の中にある微高地などを知るにはこちらのほうが使えるので、もし、スマホなどで今ひとつ分からないと言う場合には、そちらも合わせて見ていただきたい。
この場所で震度6強以上の地震が起きる確率は?を
全国地震動予測地図でチェック
次は独立行政法人防災科学技術研究所のJ-SHIS(地震ハザードステーション)。この機能の一部がスマホ、アイフォーンで使える。このアプリではこれから30年間で震度6強以上の地震に襲われる確率や表層地盤地図などを表示でき、画像は何が見られるかの一覧。震度6強ともなると、古い木造住宅などはもちろん、コンクリート造でも被害が出る可能性が出てくるから、確実に見ておきたいところ。使い方としてはどれを見たいかをチェックし、それを地図あるいは地図+写真の上に表示するかを選択すると、予測地図が出てくる。分かりやすさで考えると地図上で使うほうがお勧めだ。
次の画像は震度6強以上になる可能性を色分けした凡例。地図上にはこれらの色でその地点の可能性が表示されるのだ。率直なところ、微妙なニュアンスの色が多いので、もう少し分かりやすくしてもらえるといいのにと思ったりする。
地図を表示する際にGPS機能を作動させると現在地にブルーのマークが付き、そこをタップすると、その場所の今後30年間の計算結果が表示される。私が自分のオフィスで表示させてみたのが画像である。幸い、震度6強以上になる確率は1.2%と低い。ほっ、である。地震の揺れは地盤の固さによって増幅するが、それがどのくらい増幅するかを示すのが表層地盤地図。もちろん、増幅する地盤のほうが揺れるという意味である。
気軽に使って防災知識を高める、
もしゆれ
正式名称は「もしもいまここで大地震の揺れに見舞われたらワタシはどうなる?」という、あまりにそのままなアプリだが、気軽に使って防災を身近に感じ、備える意識を高めるにはお勧め。アプリを起動し、自分、あるいは一緒にいる人の顔を撮影すると、3秒後にそこで何が起こったかが表示され、注意事項、プラスアルファ情報が表示される。ハチ公を撮ってみたところ、ガス・粉塵で呼吸が苦しい状況に陥るらしく、ガスマスクが表示された。自分の顔を撮影していたら、そこにマスクが乗った画像になったわけである。
さらにこの場所の危険度も表示される。渋谷ハチ公前では建物倒壊の危険性が高く、土砂災害は地形からして当然だが、起こらないであろうことが分かる。このアプリには撮った相手の顔がとんでもないことになっちゃうというお楽しみ(?)もあり、ネタとしても受けるはず。フェイスブックやツィッターに送信もできる。ただし、使えるのはアイフォーンのみ。このアプリも作ったのは前項と同じ独立行政法人防災科学技術研究所。一括してダウンロードできるページもあるので、そこから2種類同時にどうぞ。
ダウンロードはこちらから。他にもいくつかアプリがあるが、使ってみてのお勧めは上記2種類。
東京、横浜限定。
過去地図充実の東京時層地図
ここまでのアプリはすべて無料だが、最後のひとつは有料(1900円)。財団法人日本地図センターの東京時層地図である(横浜版もある)。それなりのお値段だが、過去地図の充実ぶりを考えると致し方なし。東京、横浜限定だが、文明開化期から始まり、バブル期までの6種類と地形が分かる段彩陰影図、現代の地図と航空写真、地図プラス航空写真を切り替えながら見られ、過去がそこがどんな場所だったかが分かる。もちろん、これもGPSを使い、現在地が表示される。
画像は中目黒駅前で新旧地図を並べてみたところ。過去地図は文明開化期のもの。目黒川に注ぐ、今は暗渠となった川がいくつかあり、どうやら、私はその上にいるらしいことが分かった。
以上、主にスマホ、アイフォーン、一部携帯で現地で使えるアプリを紹介した。いずれも非常に役立つものではあるが、過信は禁物。縮尺の問題もあるし、ハザードマップ作成時のメッシュ化で抜け落ちる情報があることもある。おおむね、こういう場所であるということを知った上で現地を歩き、自分の目で、体で土地の高低、傾斜を読み取るようにしていただきたい。
ちなみにトップ画像はハチ公の脇でハチ公が向いている方位をコンパスで確認しようとしている写真。東100度前後らしかった。
■ご紹介したアプリ一覧
・20万分の1日本シームレス地質図
(独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター) 無料
・J-SHIS 地震ハザードステーション
(独立行政法人防災科学技術研究所)無料
・もしゆれ
(独立行政法人防災科学技術研究所)無料
・東京時層地図
(財団法人日本地図センター) 1900円
・横浜時層地図
(財団法人日本地図センター) 1200円