世界で評価される日本料理を世界遺産に
日本料理は、地域や季節ごとに多様で豊富な旬の食材を用い、器や盛り付けを愛でる美意識があり、年中行事や儀礼との結びつきが深い食文化があります。また健康の面では、ご飯を主食に、魚や肉類を主菜とし、野菜や芋、豆、きのこ、海草など幅広い食品を副菜や汁物にする一汁三菜を代表とする献立は、栄養のバランスがとりやすいのが特長です。脂質でおいしさや満足感を生み出す西洋料理と異なり、日本料理は「だし」のうま味を効かせ、脂質の含有量が少ないことも、海外から高い評価を受けています。
文部科学省によりますと、世界では自国の食に関する分野をユネスコの無形文化遺産として登録する動きがあり、フランス美食術、地中海料理、メキシコ、トルコの伝統料理が社会的慣習として登録されています。日本も、日本食文化の無形文化遺産登録を目指して調査・検討を重ね、2012年3月に登録の提案を行いました。今後は、ユネスコの検討・審査を経て、2013年秋頃には可否が決定される予定です。
山ばな平八茶屋 代表取締役社長 特定非営利活動法人 日本料理アカデミー 地域食育委員長
園部晋吾氏
近年は、食育活動の動きも熱心で、各地の学校や地域で積極的に展開されています。京都市では、特定非営利活動法人 日本料理アカデミー(以下、日本料理アカデミー)という団体が、プロの料理人による食育活動を小学校で実施しています。
今回は、日本料理アカデミーの地域食育委員長であり、山ばな平八茶屋 代表取締役社長 園部晋吾氏に、食育活動を通じて感じることや、日本料理とは私たち日本人にとってどんな存在なのかを伺いました。
プロの料理人が小学校で食育活動
日本料理アカデミーは、2004年8月に日本料理の真の姿を国内・海外に発信するため、京都市内に拠点を置く日本料理店の店主や料理関係者らによって設立された全国組織です。山ばな平八茶屋は、天正年間創業の400年続く老舗料亭・料理旅館。夏目漱石の『虞美人草』にもその名が登場します。
また一方、国内における料理人の間では、若い世代の日本食離れが懸念され、今後の日本料理はどうなるのかという閉塞感が高まっていたそうです。
そこで、日本料理アカデミーでは、「日本料理の世界的な理解促進」と「次代の日本料理への貢献」を柱に活動を開始され、日本料理研修事業や海外での日本食文化紹介事業などを通じて、日本料理や日本文化を海外で伝承する人材育成などを行われています。
また2006年度より京都市教育委員会と連携し、毎年京都市立小学校のうち17校においてプロの料理人による地域食育活動を行い、京都の子どもたちが日本料理の継承者として育っていくことを推進されています。