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65歳まで雇用が本当に若年雇用を奪うのか(2ページ目)

2013年問題に備え、65歳まで雇用を義務づける法律改正が行われます。若者の仕事を奪うと批判も多いのですが本当でしょうか。実は意外な「敵」がいたりします。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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労働者人口は放っておいてもどんどん減る分、若者の機会は増える

15~65歳未満の人口を「現役世代」と考えてみると、実はすでにその頭数は大きく減っています。1995年に8716万人いた現役世代の数は、今や8017万人程度とみられています。さらに現役世代の人口数は大きく減っていきます。2020年7340万人、2030年6773万人、2040年には5786万人という勢いです。この差は少子化と団塊世代の65歳到達によって生じるものです。

長い目(といっても5年先でも十分に影響あり)でみれば、若者の仕事がない、という問題は今以上に深刻化することは考えにくいのが日本の人口の状態です。(むしろ、もっと働き手を増やさないと日本のシステムが成り立たないかも、という議論がされている)一方、仕事をして所得を得ている人(就業者数)をみてみますと1995年の6414万人が、現在は6300万人を割っているくらいに減ったものとみられます。しかし、現役世代の頭数の減り具合に比べるとそれほど減ってはいません

「働く人口は大きく減り」「実際に働く人はそれほど減っていない」とすれば、60代が「働く席」を奪って、若い人の「働く席」がない、というのはあまり正確ではありません。(今回は略しますが「今まで働いていなかった現役世代が働く」という、同じ世代間での席の奪い合いも生じています)

もし奪われている席を明確にするとすれば「正社員の席」であり、非正規の働く人が増えているということです。近年正社員の席が減少するのと同じくらい、非正規の仕事の席が増えているからです。その数は数百万人にもなります(2003年から2010年で、非正規+250万人、正社員-90万人という統計あり)。つまり、「60歳代の正社員が1人辞めたら、新人の正社員を1人雇う」というシンプルな状況にもはやなっていないのです

若者の働き口の問題と、60歳代前半の働き口問題を冷静に考える

結論とすれば、若者の仕事の問題を、高齢者の働き口とリンクさせて議論するから論点がずれてミスリードを誘っています。残念ながらそれは一対にならないからです。若者の仕事の問題は、「非正規採用を正社員と原則として同等に取り扱うこと」「新卒採用のみに依存する求人を廃止すること」のほうで議論したほうが実は有意義です。

まず、非正規雇用というアプローチは、会社に採用をしやすくする反面、賃金格差や社会保障の格差を生みます。特に社会保障の適用の差を設けることは致命的問題で、会社を楽させたツケが個人の老後に帰着する(年金が減る/なくなる)関係を付くってしまいます。同等の仕事をしていても非正規は安い賃金、というのも問題です(差を生じさせるのなら労働時間や仕事の責任によってのみ差をつけるべきです)。

現在、非正規社員の一部に厚生年金等を適用する条件緩和がありますが、そうではなく「勤労者はみんな、厚生年金と社会保険を適用する」というルールに統一したほうが問題はすっきりするでしょう。非正規は社会保険を適用しなくていい、という考え方がそもそも間違いの始まりだったからです。

また、新卒採用のみに求人を特化させたことで「たまたま就職年度に世の中の景気が悪かった新卒学生」が何十年も割を食う、という問題が生じています。これも若者に景気悪化のしわ寄せを押しつける悪習だと思います。自分も就職氷河期最初の世代なので、こんな不公平はないと思っています(バブル世代なんか、新卒数は団塊ジュニアより少ないのに求人が多かったのですから、こんなに不公平な話はありません!)。

現在、3年以内既卒者を新卒扱いするような取り組みが行われていますが会社の努力義務にとどまります。求人に「新卒を対象」は不可、とするべきです。この2点のみ解決すれば問題が霧消するほど簡単な話ではありませんが、それでもずいぶん世の中は改善するのではないでしょうか

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高齢者雇用から議論が若年雇用(というか採用)に話題が転じてしまいました。しかし、もっともらしい議論ほどその論拠や接続部分に疑いをもってみるといいと思います。アジテーターの技術は、もっともらしいところを巧みにつないで感情に訴えかけ、世論を喚起するところにありますが、読者サイドもそれを読み取る技術が必要です。

実は65歳雇用は、彼らに年金を受け取らず65歳まで暮らしてもらうことで、若年層の負担を軽減する効果もあります。単なる世代間不公平の問題でもないのです
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