65歳まで雇用義務化と大卒ニート3万人の関係?

2013年問題が間近に迫っています。これは、60歳到達者が完全に無年金になり、61~65歳まで順次年金受取開始年齢が引き上げられていく問題です。60歳代前半が完全に無収入になると貯金等の取り崩しを余儀なくされますから、長い老後の最初の5年で一気に財産を使い切ることが心配されます。(→ 「2013年問題は会社内世代間闘争になる?(2012/7/31)」も参考にどうぞ)

すでに65歳までの雇用を図るべく実施されている高年齢者雇用安定法は、定年延長や継続雇用の実施を義務づけていますが、会社が労使協定により継続雇用の対象者を決めるのが一般的です。管理職は除外したり、運営上は希望者全員とはなっていない会社が多いようです。

今回、原則全員を年金受給開始年齢まで継続して雇用することを義務づけ(強化)する法案が議論され、8月29日に成立しました。これにより、60歳を迎える人の「無収入」問題に改善が期待されます。一方で、2012年春の大卒者の6%、3.3万人が仕事が見つからずニート化しているというニュースもあります(文部科学省、学校基本調査速報)。卒業までに就職がみつからず今も求職している人の割合も含めると、15.5%にものぼるとされています
若い人に働くチャンスが与えられないことは、個人的にも社会的にも大きな問題です

こうしたニュースを見ると、高齢者の雇用を守るほど、若者の仕事が奪われるという構図で議論されることになります。お年寄りが職場の席を譲らないため、若者の働くポストがない、というわけです。これは本当でしょうか? 少し考えてみます。

60歳代の雇用は給料泥棒ではない~新卒以下の場合も

高齢者雇用の批判でよくみかけるのが、「給料泥棒が居座る」というような論調です。年収600万円以上のお年寄り社員が3人、5年長く会社にいたら、年間1800万円、5年で9000万円必要です(実際には会社負担の社会保険料等で1億を超える)。同じお金があれば年収400万円の新卒を4.5人雇えます。高給取りがいつまでも席を譲らないことで若い人の採用が進まないというわけです。

しかし、高齢者雇用の実態はそうではありません。継続雇用はいったん退職して会社と再契約しますので、賃金もゼロベースで見直すのが一般的です。統計的には30~40%ほどダウンするのが一般的で、現実的には月収20万円程度(あるいはそれ以下)というのも珍しくありません。労働日数を抑えることでさらなる賃下げにすることもあります。週5日働いていた現役時代と比べ、3割下がった賃金計算で、かつ週3日とすれば実際に払う賃金は半分以下、ということもあります。

今回の継続雇用強化についても、「60歳代の社員に高い年収を維持させる」と考えている会社はほとんどありません。企業サイドでよく議論されているのは「生涯賃金は変わらない」というアプローチで、50歳代の賃下げを行い、その分を継続雇用期間の年収に回すことが検討されています。今までより長い年数働くわけですから、時給換算すれば、実質的賃下げです。

つまり、「たくさん給料をもらっている高齢者が、若者の邪魔をする」というのはちょっと不正確と考えたほうがいいでしょう。しかし、「年収ベースではあまり変わらないとしても、高齢者のポストが若者のポストを邪魔しているのではないか」という疑問は残ります。こちらはどうでしょうか?

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