投資信託の基準価額と分配金は重要なのか?
多くの日本人にとって、これから取り組むべき運用は、国際分散投資です。そして、国際分散投資の土台は投資信託であるべきです。その投資信託のパフォーマンスを人は基準価額と分配金で見極めようとしてしまいます。しかし、本当に大事なモノは、そんな数字ではありません。基準価額だけでは何も分からない
基準価額はまったくパフォーマンスを計るモノサシになりません。なぜなら、他と比較できないからです。投資信託の基準価額は、それが設定されたとき(誕生日)に1万円と決められています。そして、時間の経過の中で、その1万円が増えたり減ったりします。その誕生日がバラバラですから、他の投資信託と比較するモノサシとならないことは当然なのです。
たとえば、年齢のまったく異なる男の人を集めて、背の高い低いを論じると、おかしなことになります。たとえば、30歳で170cmの人と10歳で150cmの人がいたとします。年齢を知らなければ、170cmの人は「背が高い」となるでしょうし、150cmの人は「背が低い」となるでしょう。しかし、10歳で150cmというのは、実は「背が高い」わけですし、30歳で170cmの人は実は「平凡」なのです。
基準価額が3万円の投資信託Aと5,000円の投資信託Bとでは、3万円の方が高いと思いがちですが、実はなんともいえません。投資信託Aは5年前に買ったときは5万円で、それが下がって今の3万円かもしれません。投資信託Bは5年前に買ったときは4,000円で、それが上昇して5,000円になったのかもしれません。
どの時点と比べるかで、同じ基準価額でも高いか安いかの判断は、まったく異なるのです。
分配金でも何も分からない
同じように、分配金の多い少ないも、その投資信託のパフォーマンスを計るモノサシには、まったくなりません。人気の投資信託では、毎月○○円などと定額の分配金をうたい文句にしています。しかし、現実のマーケットで毎月決まったリターンが得られるわけはないので、分配金とは実際には元本の取り崩しを意味しています。
たとえば、基準価額が1万円でした。そしてその月の運用収益が10円だったとします。普通に考えれば分配金は10円しか出ないはずですが、それではお客様が満足しません。そこで無理をして40円の分配金を出します。これは予定された分配であり、建前(販売戦略)の貫徹です。おかげで、基準価額は30円マイナスの9,970円で翌月はスタートすることになります。こんなごまかしを喜んではならないのです。
会社の優劣や収益力を見るときに、新入社員の初任給の多寡を引き合いに出す人はいないと思います。分配金も初任給も、母体の優劣を示すモノでは何らありません。
本当に大事な数字は「騰落率(トータルリターン)」
基準価額にも意味がない、高い分配金も問題だ、となると何をたよりにしたらいいのでしょう?それは、一定期間の基準価額の騰落率です。ある期間の間で、基準価額が上昇(あるいは下落)した金額を、元の基準価額で割った収益率こそが重要です。
そして、分配金が出る投資信託であれば、公平を期すために「分配金再投資後の基準価額」の騰落率で判断してください。「分配金+基準価額」の上昇率が投資信託のパフォーマンスです。
もう一つ考慮したい数字にコストがあります。そして、騰落率と分配金利回りに、コストを含めたパフォーマンスを示すのが、トータルリターンです。投資信託のパフォーマンスは、年1回以上、トータルリターンの形で、投資家に通知することが義務付けられていますので、ご確認ください。
ところで一定期間とは、どのくらいの期間をいうのでしょうか?
最短期で1カ月です。短期的な趨勢を見極めるなら1カ月間の騰落率を比べてみましょう。しかし、短期的な騰落率は当てになりません。「たまたま」という偶然の影響や、そのファンドにとって得意な環境であったとかいう影響を強く受けてしまうからです。
基本的なパフォーマンスを比べるならば、3年から5年の騰落率で比較をしてください。そのくらいの期間ですと、上昇相場や下落相場を含んだ、いろいろな環境での成績が平均的に表れてきます。ですから、基本的なパフォーマンスと呼べるのです。
この数字は、投資信託の月報などにいくつかの期間ごとの運用実績として表示されています。ですから、他の投資信託と比べるときにも公平な基準となります。なお、証券会社から通知されるトータルリターンは、投資家の保有期間に応じた計算がされていますので、ご注意ください。期間は、保有銘柄によって異なるということです。
な~んだ、大事なモノは騰落率なんて、そんな幼稚な話か、とがっかりしたあなた。次は、シャープレシオを勉強してみてください。過去にこんな記事を書いています。参考にしてください。
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