名前の読み方についての誤解
漢字というのは、意味と読み方の両方をもっています。つまり表意文字です。そのため意味と読み方の混同というのも起きることがあります。たとえば最近は「翔」の字をトと読ませる名前が流行していますが、これは意味と読み方の混同なのです。翔の字は確かに「とぶ」という意味であり、かつて「翔ぶが如く」という小説も大ヒットしているので、「とぶ」と読むはずだ、と勘違いしてしまう人が多いのです。漢字の読み方、名前のふりがなに法律の規定はありませんし、もちろんドラマや小説のタイトルなどなら、正式でない読み方でも特に大きな支障が出ることもないでしょう。ただ法律の規定がないことから、「人の名前の読み方は自由だ」といった話が流れたり、間違った読み方の名前を「あて字」と呼んで、名づけの一種であるかのように誤解し、「こう読ませます」などと言う人もいます。しかし、辞典によってのせている読み方の範囲に違いがあったとしても、漢字の読み方は社会の約束事、ルールであり、みながその約束事を守ってこそ漢字が文字としての役目を果たすのです。漢字の読み方は個人が勝手に決めるものではありません。他人に漢字の間違った読み方を強要することは、それこそ不遜で失礼なことであり、そういう名前は社会で名前としての機能を果たせなくなります。正しい読み方の名前にすることは、社会人としての良識にまかされていることで、法律で縛られないと正しい読み方の名前が作れない、というのではあまりに情けない話になってしまいます。