名づけの本を見ますと、同じ漢字なのに本によって違う読み方が書いてあったりします。どれが正しいのかよくわかりませんが、どこかの本にのっていれば使ってかまわないのでしょうか?
漢字の読み方は法律で決められてはいない
本によって名前の漢字の読み方が違う
名づけの本はもちろんですが、専門家の作った辞典でもそういうことがあります。辞典によって読み方に違いが出るのには、いくつかの理由があります。まず多くの方がご存じのように、漢字には音、訓、名乗りの3つの読み方があります。
音というのは中国での読み方、またはそれが日本で変化したものですが、広い中国では、同じ漢字でも時代や地域によってちがう読み方が生まれ、漢音、呉音、唐音などのほか、どれにも属さない慣習的に広まった読み方というのもあります。たとえば「歩」という字は、漢音ではホ、呉音ではブ、そして慣習ではフの読み方がありますが、私たちは圧倒的にホの読み方を使い、将棋をする時だけフと言います。また「寿」の字などは漢音ではシュウと読みますが、実際は呉音のジュ、慣習のスの読み方の方のほうがよく使われています。音だけでもこのようにいろいろな種類があり、どの範囲の読み方をのせるかは辞典によって違いがあるのです。
訓というのは、主にその字の意味をベースにした日本での読み方です。これも統一見解が決められているわけではありません。たとえば「愛」の字は、一部の辞典でのみ「めでる」という訓読みをのせています。その辞典に従えば「愛でる」という書き方も正しいことになり、「愛衣」と書いてメイと読ませてもいいことになります。
名乗りというのは、日本で慣習的に名前に使われてきた読み方です。しかしたとえば「颯」の字は、一部の辞典でのみサヤという名乗りをのせています。つまりその辞典に従えば、「颯花」という名前をサヤカと読ませても間違いではない、ということにはなります。
このように専門家の作った辞典ですら読み方の範囲に違いが出ることはあります。ただそれはむしろ例外的なことであり、基本的には漢字の読み方はどの辞典も大体同じだ、とも言えます。例外的な違いについて悩むよりも、名前というのは、どの辞典にものっている、誰にでもわかる読み方にしておきませんと、社会生活で困ります。ましてや名づけの本などは、どの辞典にものっていない間違った読み方の名前をちりばめたものさえよくありますから、名づけの際はまず正式の辞典を用意し、ご自分で読み方を確かめるほうが安全です。
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