そもそも免疫とは
病原体に抵抗する免疫は大切です
ヒトの周りの環境には、様々な細菌、ウイルス、寄生虫などの微生物があります。人体への微生物の侵入を阻止し、たとえ侵入しても様々な障害にならないように働くのが免疫です。体に発生する異常(例えば癌などに対する発症予防)にも働いています。
この免疫の働きが低いことを「免疫不全」と言い、免疫不全症の場合、特に感染症にかかりやすくなってしまいます。もともと免疫不全症があることを、「原発性免疫不全症」と言います。一方で、HIVとしてよく知られる免疫不全ウイルスなどによって免疫不全になることを「後天性免疫不全症」と言います。
- 反復する感染
- 重症化する感染
- 治りにくい感染
- 稀な病原体による感染
- 感染により予期しない、重度の合併症
原発性免疫不全症の種類
原発性免疫不全症には200以上の種類がありますが、大きく以下の8種類に分類して考えられています。- Tリンパ球とBリンパ球ともに異常のある複合型免疫不全症
- 主に抗体を作るシステムに異常のある免疫不全症
- その他よく知られている免疫不全症
- 免疫の調節異常による病気
- 細菌などを食べて殺菌する白血球の数、機能の異常を示す免疫不全症
- 自然免疫系と呼ばれるシステムの異常を示す病気
- 自己炎症性疾患
- 補体と呼ばれる免疫システムの異常を示す病気
日本国内では、人口10万人あたり約3人にある病気です(2008年時点のデータ)。
原発性免疫不全症の症状
Jeffery Modell Foundationが10つの症状を日本の調査研究班が日本版で示しています。10つの症状を判りやすくします。- 乳児で、気管支炎・肺炎などの呼吸器感染症、胃腸炎などの消化器感染症を繰り返し、体重の増えが悪い、発育がよくない
- 1年に2回以上肺炎にかかる
- 気管支が広がって炎症を繰り返す気管支拡張症を発症する
- 2回以上、髄膜炎、骨の中の炎症である骨髄炎、皮膚の下に炎症を起こす蜂窩織炎、細菌が血液に侵入する敗血症や、皮膚の下に膿がたまる皮下膿瘍、肝臓や腎臓などの臓器に膿がたまる臓器内膿瘍などの感染症にかかる
- 抗菌薬を服用しても2カ月以上感染症が治らない
- 重症の副鼻腔炎を繰り返す
- 1年に4回以上、中耳炎にかかる
- 1歳以上に、口の中に白いカビがある鵞口瘡が治らない、皮膚にカビが炎症を起こす皮膚真菌症、重度で全身に広がるイボがみられる
- BCGという結核に対する生ワクチンによる重症副作用、単純ヘルペスウイルスによる脳炎、髄膜炎菌による髄膜炎、EBウイルスによって本来病原体を食べる(貪食する)貪食細胞が自分の血球を食べる重症血球貪食症候群にかかったことがある
- 家族に乳幼児期に感染症で死亡した人がいる
次のページで免疫不全症の検査を説明します。