住宅工法/耐震住宅・住宅工法

住宅の耐震基準はいつ、どう変わった?1981年と2000年が転換期

建物の耐震性を見極める方法の一つに「建築年月日」があります。今回は戸建て住宅に的を絞り、建築基準法の改正による耐震基準の変遷や、旧耐震・新耐震の内容、建てられた年代と耐震性の関係を詳しく見てまいりましょう(初出:2012年6月 改訂:2018年)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

耐震基準の変遷で家の耐震性がわかる、いつ建てられたか確認を

建物の耐震性の見極め方の一つに「建築年月日」があります。建てられた時の建築基準法の内容によって、どの程度の耐震性を持っているか、おおよその見当をつけることができます。
 
建築された年月日は確認申請書類などに記載されている。

建築された年月日は確認申請書類などに記載されている。

 
建築基準法は、耐震基準をはじめ建物を建てる時の最低限の決まりを定めており、必ず守らなければならない法律です。大地震を経験するたびに建物の被害状況などを検証し、改正を繰り返しているため、「生きた法律」とも呼ばれています。

今回は戸建て住宅のケースに的を絞って耐震基準の変遷を追ってみたいと思います。

【目次】
1.耐震基準の変遷1:建築基準法制定から1981年の大改正まで
2.耐震基準の変遷2:1981年から現在まで
3.木造戸建て住宅の耐震性向上:転換期は「1981年」「2000年」
4.住宅の耐震性における大きな転換期1:1981年(昭和56年)
5.住宅の耐震性における大きな転換期2:2000年(平成12年)
6.1981年以前に建てられた旧耐震の木造戸建て住宅への対応
7.1981年6月~2000年5月着工の住宅への対応


 

耐震基準の変遷1:建築基準法制定から1981年まで(旧耐震)

耐震基準改正の大まかな流れを見てみましょう。

全国全ての建物に耐震設計が初めて義務付けられたのは1950年。この年に建築基準法が制定されました。その後1964年の新潟地震、1968年の十勝沖地震を経て1971年に建築基準法の改正があり、その後1978年の宮城県沖地震を経て1981年6月に大きな改正がありました。

1981年6月以降の耐震基準を「新耐震基準」と呼ぶようになり、1981年5月以前のもの(旧耐震)と区別するようになりました。

 

耐震基準の変遷2:1981年から現在まで(新耐震基準)

このように、「1981年(昭和56年)」は建物の耐震性における大きな転換期になりましたが、その後も建築基準法の改正は行われ、1995年の阪神淡路大震災を経て2000年の改正、2004年の新潟中越地震を経て2005年にも改正、と繰り返されています。

2006年には姉歯事件と呼ばれる耐震強度構造計算書偽装事件が起こり、2007年には建築確認申請の厳格化などを盛り込んだ建築基準法の改正が行われ現在に至ります。過去の大地震と建築基準法の変遷の大まかな流れは記事新しいほど耐震性は高い?耐震基準の変遷にて一覧表を掲載していますのでぜひご覧になってください。

 

木造戸建て住宅の耐震性向上:転換期は「1981年」「2000年」

木造戸建て住宅の耐震性の大きな転機は「1981年」と「2000年」です。それぞれの年に行われた建築基準法の改正で、木造戸建て住宅に求められる耐震性能が大きくアップしています。

 

住宅の耐震性における大きな転換期1:1981年(昭和56年)

1981年(昭和56年)の改正では新耐震基準(※)が施行され、木造住宅においては耐力壁の量、耐力壁の倍率などが見直され、耐震性が大きく向上しました。1981年6月以降に確認申請を取得した新耐震基準の住宅なら、大地震発生時でも家の倒壊・崩壊は免れ、家の中にいる人の命は守られる程度の耐震性を備えていることになります。

(※)新耐震基準…数十年に一度程度発生する震度5程度の地震に対して構造躯体に損傷を生じず、数百年に一度程度発生する震度6強~7程度の地震に対しては倒壊・崩壊しない程度

 

住宅の耐震性における大きな転換期2:2000年(平成12年)

1981年の新耐震基準の制定後、2000年(平成12年)には木造住宅において耐震性に大きく影響を与える改正がありました。具体的な内容を下記に挙げます。

■基礎形状
地耐力に合わせた基礎の仕様が明記されました。そのために事前の地盤調査が事実上必須となりました。
 
地盤調査で地耐力を調べ、それに見合った基礎形状にしなくてはならない。

地盤調査で地耐力を調べ、それに見合った基礎形状にしなくてはならない。


■柱頭、柱脚、筋交いの接合部の接合方法
地震時に家が崩壊する原因として柱の足元や頭部分が基礎や梁から引き抜かれてしまうという現象がありますが、引き抜き防止のために使用する止め金物の種類などが具体的に明記されました。
柱や筋交いの足元・頭部分の接合が甘いと崩壊・倒壊してしまう

柱や筋交いの足元・頭部分の接合が甘いと崩壊・倒壊してしまう


■耐力壁のバランス配置
建物の耐震性を確保するためには、耐力壁の量の確保とともに壁をバランスよく配置することが大切で、この改正後は壁配置のバランス計算が必要となりました。

いずれもそれまで設計者の裁量に任されていた部分でしたが、改正で仕様が具体的に明記されました。1981年以前、または1981年~2000年の間に建てられた木造戸建て住宅については以下の対応が望まれます。

 

1981年以前に建てられた旧耐震の木造戸建て住宅への対応

1981年5月以前に確認申請を取得した木造戸建て住宅の場合、特に耐力壁の量、柱・筋交い等の接合状況、基礎の仕様において耐震性が低い可能性が高く、耐震診断を受け必要であれば耐震補強を行うことをお勧めします。
 

1981年6月~2000年5月着工の住宅への対応

1981年6月以降、2000年までに着工した木造戸建て住宅は、2000年以降に着工した住宅に比べ、耐力壁の配置、柱や筋交いの接合部、基礎などに弱点がある可能性があります。従って、もしなんらかの不安を感じるようであれば、新耐震基準で建てたから大丈夫とやみくもに安心してしまうのではなく、専門家による耐震診断、耐震補強を行うことをお勧めします。

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