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動物愛護管理法が一部改正されたのをご存じですか?

今年は『動物の愛護及び管理に関する法律』(動物愛護管理法)について改正の年にあたります。この6月より、一部が改正されました。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

『動物の愛護及び管理に関する法律』については以前から改善すべき点が指摘されており、平成11年および平成17年の2度にわたり改正が行われました。その後、5年を目途として必要がある場合は法の改正を行うということになりましたので、今年度の改正に向けて「動物愛護管理のあり方検討小委員会」が設けられ、活発な議論が重ねられてきました(前回の改正法施行は平成18年6月)。その結果、今年の6月より新たに付け加えられたものがあります。

ペットショップなど夜間における犬猫の展示は禁止

ペットショップ

販売業者や貸し出し業者、展示業者について、夜8:00~朝8:00まで犬猫の展示は禁止。

 これまで特に都会の繁華街において、深夜でも犬猫を販売するお店があり、問題となっていました。ただでさえショーウィンドウの中で終始人目にさらされる子犬や子猫にとっては大きなストレスとなるでしょう。加えて、深夜であればお客さんがお酒に酔った勢いでペットを購入するということも充分考えられます。なんの準備や考えもなく動物を手に入れるということは、やはり好ましいことではありません。

ここに規制のメスが入り、ペットショップなど販売を目的とする業者や貸し出し業者、展示業者に対して、夜の8:00~翌朝8:00までは犬猫の展示をしてはいけないということになりました。夜の8:00を過ぎたら、展示してある場所から別の場所へ移動させるか、それが無理であればカーテンで仕切るなどしてお客さんには見えないようにしなければなりません。この間、お客さんに犬猫を触らせたり、販売契約ができているからといって譲り渡したりすることも禁止の対象となります。

また、たとえ日中の展示であったとしても、やはり長時間展示し続けるということは犬猫にとってストレスになりますから、途中で適度な休憩時間とも言うべき展示しない時間を設けなくてはいけません。

例外的なのは猫で、生後1年以上の猫の場合は再来年2014年5月いっぱいまでの2年間に限り、夜の8:00~10:00までの間はこの規制の対象外となります。ただし、それには条件があり、展示場所から別の場所へ猫が自分で自由に移動できるつくりになっている必要があります。

動物取扱業に新たな業種を追加

動物愛護管理法ではペットショップやブリーダー、輸入業者など販売を目的とした業種、ドッグサロンやペットホテル、ペットシッターなどペットを一時預かる業種、トレーニングに関わる業種、モデル犬などペットを貸し出す業種、動物園や水族館など展示系の業種(これにはふれあいを目的としたアニマルセラピーに関わる業者も含まれる)の人は登録をしなければいけないことになっています。実店舗がなくインターネットの取引であっても、出張でトレーニングをしている場合も含まれます。

これまでこのカテゴリーからは漏れていた業種が新たに2つ追加されました。1つ目は、オークションという形で動物の売買をする業種。会場を設置してオークションを行うものが対象であり、今回の改正ではインターネットオークションは対象外になっています。2つ目は、飼育費としてお金をもらって預かった動物の世話をする業種です。昨今ではなんらかの理由で世話をしきれないシニア犬を終生預かるという老人ホームならぬ老犬ホームのようなものも存在しますが、そうしたサービスはこの対象となります。

法律は私たちに身近であるもの

環境省ポスター

動物の遺棄・虐待は犯罪であることを訴えるポスター。/出典:環境省ホームページ

 現時点での改正点は上記の2つ。これらは動物に関わる仕事をしている人たちに関係することであって、一般のオーナーには関係ないことと中には思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ペットショップで買い物をするのも、トレーナーさんにトレーニングをお願いするのもオーナーである私たちです。動物愛護管理法では動物取扱業者は登録の他に、店舗内にその登録証を掲示することや、犬を購入するのであれば飼い方や犬種の特性、ワクチン接種の有無、健康状態など事前にお客さんに対して説明しなければならない、それなりの資格や経験をもった動物取扱責任者を置かなければいけない、なども決められていますので、サービスを利用する際にはそういったことを知っておくことも大事でしょう。

また、ペットショップで売られている子犬のうち約6割はオークションを経てやって来たコたちだということです。会場を設けてのオークションというのは、いわば物品の競り市のようなもの。そうした子犬たちは早期に母犬から離されることが多く、感染症に対するリスクや社会化不足などの問題が指摘されています。ご存知のように問題行動を起こす犬は社会化不足が原因となることが多いとされていますので、感染症リスクにしろ、犬が欲しいという一般のオーナーにとってはたいへん身近な問題へとつながるわけです。

動物愛護管理法改正へ向けての検討項目の中には以下のようなものが含まれています。
    ・ 生後何週齢で子犬や子猫を親から引き離すべきか、その日数について。
    ・ インターネットでの取引もあることから対面した上での説明や販売の義務化。
    ・ 犬猫の繁殖回数についての制限。
    ・ 犬猫について不妊去勢の義務化。
    ・ 犬のマイクロチップ装着の義務化。
    ・ 多頭飼育の適正化。
    ・ 罰則の強化。
    ・ 災害時の対応について。
    ・ 行政による犬猫の引き取り義務の緩和。
    ・ 実験動物や産業動物の取扱について。           など

この項目を見ただけでも、動物愛護管理法は決して私たちから遠い法律ではないのです。

法律というのは人間、社会ありきのものです。法律があって人間社会があるのではなく、私達が生活を営むにあたって必要であるところから生まれてくるもの。よって、法律もその時代や状況によって変化していきます。『動物の愛護及び管理に関する法律』にしてもしかり。専門家が法律を変えるのではなく、世間の声が法律を変えます。

今回の改正にあたっても昨年の7月~8月にかけて募集された「動物取扱業の適正化について」のパブリックコメントでは個人と団体を合わせて122,384件(*1)、同年11月~12月にかけて募集された「動物愛護管理のあり方について」の募集に対しては個人と団体合わせて55,992件(*2)の回答が寄せられました。それだけ世間の関心が高いということの表れだと思いますが、「ここがもうちょっとこんなふうだったらいいのに」とただ思うだけではなく、自分の意見を伝える術があるのであれば、パブリックコメントなどに対して積極的に取り組んでみるのもいいのではないでしょうか。

動物愛護管理法はまだまだ改善すべき点があると言えます。今後のさらなる検討・改善を願いたいものです。


出典:
(*1)=環境省/「動物取扱業の適正界について(案)」にかかるパブリックコメントの集計結果
(*2)=環境省/「動物愛護管理のあり方について(案)」にかかるパブリックコメントの集計結果
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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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