骨肉腫とは
骨組織に原発する悪性腫瘍で、直接類骨(骨組織の構成要素で基質と繊維からなるもの)、あるいは骨(骨組織の構成要素でリン酸カルシウムで作られているもの)を産生する悪性腫瘍です。骨原発性悪性腫瘍のなかでは最も頻度が高い腫瘍です。骨肉腫の頻度、年齢、性差
人口100万人あたり、1年間に3人の頻度で発生する非常に珍しい悪性腫瘍です。あらゆる年齢に発生することが知られています。10歳代が60%で、20歳代が15%を占め大部分が若年者です。しかしながら高齢者にも発生することがあり、注意が必要です。女性より男性の発生が若干多い腫瘍です。骨肉腫の原因
水道水に加えられているフッ素が原因とする説がありますが、日本ではフッ素は加えられていないため無関係です。それ以外は原因不明の悪性腫瘍です。骨肉腫の発生部位
膝(大腿骨遠位と脛骨近位)が60%、股関節が15%、肩関節が10%、顎が6%という順番の発生頻度となっています。好発部位は長管骨の端です。
骨肉腫の症状
腫瘍が発生する部位の腫脹と疼痛です。通常痛みは伴いませんが、腫瘍が増大し周辺の臓器、神経を圧迫するようになると軽度の痛みが発生します。進行した場合、激痛となります。膝上に発生した骨肉腫。
骨肉腫の診断
●採血血清アルカリファオスファターゼ、乳酸脱水素酵素が高値となることがあります。
●単純X線
初期には診断が難しい場合があります。進行すると骨を産生するのですぐに診断がつきます。
膝単純X線像。腫瘍が骨を産生しています。
●MRI
MRIではより細かく腫瘍の性質、周辺の組織との位置関係、血管、神経と腫瘍の関係など多くの情報が得られます。
MRI画像。腫瘍の内部の構造、周辺の組織との位置関係がより鮮明にわかります。
●病理
骨肉腫の病理組織標本。
骨肉腫の治療法
現在骨肉腫の標準治療法は新補助化学療法(術前化学療法、手術、術後化学療法の組み合わせ)と患肢温存手術が施行されます。温存手術の適応がない場合のみ肢切断術が行われます。骨肉腫が診断された時点で肺転移が多く見られること、肺転移が見られない場合でも細胞レベルでは肺転移が生じている可能性が高いことから、手術の前に化学療法を施行することが標準となっています。
●新補助化学療法
■NECO95Jプロトコール(1995年から日本で行われている治療法)
中間解析での5年累積生存率が77.1%と非常に良好な治療法です。手術10週間前から高容量メトトレキサート、シスプラチン、アドリアマイシンを2-3クール施行し、手術を行います。1クールで腫瘍が進行した場合、この3剤以外のイフォスファミドを2クール施行します。手術の標本で化学療法の効果判定を行い、効果があった場合、術前と同じ化学療法を術後に施行します。効果が乏しい場合、イフォスファミドを2クール施行し、最後に高容量メトトレキサート、シスプラチン、アドリアマイシンを1クール施行します。