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犬の病気感染を防ぐ消毒の種類と方法

病気にならないためには何より予防が大事。食事内容や運動に気を配るとともに低ストレスの生活を心がけて免疫力を高め、体の中から健康になるということも大切ですが、消毒も重要な予防策です。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

消毒、殺菌、滅菌、除菌…ってどこが違う?

ウィルス、細菌、真菌…

あまりに清潔を気にし過ぎて、逆に免疫力を弱めてしまうこともある。消毒も適度に。

愛犬との生活の中ではいろいろと消毒をすることがあるかと思います。その「消毒」という言葉から連想するのは、殺菌、滅菌、除菌、抗菌、減菌などという言葉。どれも似たように思えますが、それぞれどこがどう違うのでしょう?

消毒
一般的によく使う消毒という言葉は、細菌やウィルスなどの微生物を死滅させたり、除去することで感染力を失わせること。

滅菌
微生物をほぼ完全に死滅させること。

殺菌

滅菌ほどの強い意味はもたない。完全に近く微生物を死滅させてはおらず、部分的に死滅させただけでも殺菌と言われる。

除菌

微生物を取り除き、その数を減らすこと。

抗菌

死滅させたり、取り除くのではなく、菌の繁殖を抑えること。

専門的には以上のようになりますが、一般的には滅菌も殺菌も同じような意味としてとらえられることが多いようです。では、実際に消毒するにはどんな方法があるのでしょうか。

消毒の種類/化学的な薬剤を使用しない方法

焼却
対象物を灰になるまで焼却することで滅菌する。対象物は紙製品や木材、繊維製品など燃えきるもの。

煮沸

ガラスや繊維製品、金属など対象物が完全にかぶるくらいまでの水を入れ、沸騰させた後5分~30分程度煮沸する。厚生労働省の『大量調理施設衛生管理マニュアル』によると、「布巾やタオル類の場合は100℃以上で5分間以上の煮沸殺菌を行う」「まな板や包丁の場合は80℃で5分以上、またはこれと同等の効果を有する方法で殺菌を行う」となっている。(*1)

蒸気消毒

蒸し器を用いて蒸気によって殺菌する。内部が蒸気に満たされてから30分以上加熱を続ける。その他、スチームや特殊なホースなどを用いて高温の水蒸気により土壌を消毒するものもある。対象物はガラスや繊維製品、金属など。

高圧蒸気滅菌・オートクレーブ滅菌

医療分野、薬剤や微生物の研究などで使われる滅菌方法。高圧力に耐えることができるオートクレーブと呼ばれる容器を使い、115~118℃の場合は30分間、121~124℃の場合は15分間、126~129℃の場合は10分間加熱する。対象物はガラス、金属、繊維製品、ゴム製品、水、試薬や培養したものなど。(*2)

紫外線消毒
254nm(ナノメートル)前後の波長の紫外線は殺菌能力が高い。ガラス、金属など表面が平坦で滑らかなもの、水、空気などに照射して消毒をする。細菌、真菌、ウィルスに対して効果があるが、照射方向から影になる部分には作用しない。体に対して直接照射すると眼や皮膚に異常が出ることがあるので注意が必要。

乾熱滅菌

乾燥した空気を電気やガスを使って直接加熱する、またはオーブンのように暖めた空気を循環させることで加熱して滅菌する方法。160℃~170℃の場合は120分、170℃~180℃の場合は60分、180℃~190℃の場合は30分加熱する。対象物となるのはガラス、金属、油脂類など。(*2)

放射線滅菌・ガンマ線滅菌

放射線の一つであるガンマ線を照射することによって滅菌する方法。対象物はガラス、ゴム製品、繊維製品、プラスチックなど。

濾過除菌

フィルターを通して微生物を濾過し、除菌する方法。            
など    

病原菌の中には自分が生存するのに不利な環境となると芽胞と呼ばれる構造物をつくって冬眠状態に入るものがあります。この芽胞は高温や冷凍、乾燥、消毒に対しても耐久性があり、中には10年以上そのままの状態でいるものもあるということです。自分にとって好都合の環境になると発芽して、もとの状態へと復元、増殖していきます。この芽胞をも滅菌できるのは焼却、高圧蒸気滅菌・オートクレーブ滅菌、乾熱滅菌などです。

紫外線を利用してトリミング用のハサミやクシ、バリカンの刃などを殺菌する消毒器。


消毒の種類/化学的な薬剤を使用する方法

アルコール類
エタノールとイソプロパノール(2-プロパノール)がよく知られている。エタノールは70~80%の濃度で皮膚などの消毒薬として使われるが、50%以下の濃度の無水エタノールの場合はやや消毒の効果が落ちる。イソプロパノールは30~50%の濃度で使われ、エタノールと比較すると安価であるが、毒性がやや強い。ともに傷のある皮膚や粘膜への使用は禁忌。引火性であることにも注意。

陽イオン界面活性剤(逆性石鹸・陽性石鹸)

皮膚や器具などの消毒に使われるのは塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムで、塩化セチルピリジニウムはうがい薬などに使われる。一般的な細菌や真菌には効果があるものの、ウィルスや芽胞には効果がないとされる。消毒対象となるのは皮膚や傷口、床などの環境。

両性界面活性剤(両性石鹸)

陽イオンと陰イオンの両方を保有するので両性石鹸と言われる。一般的な細菌、結核菌、一部の真菌、一部のウィルスに対して有効であるが、ウィルスの多く、芽胞に対しては効果がない。

塩素化合物(次亜塩素酸ナトリウム)

殺菌力が強く、一般的な細菌、ウィルス、糸状菌、芽胞などに有効。食器やまな板の場合は洗った後に5分以上は希釈液の中に浸し、ウィルス汚染された器材などは洗った後に30分以上浸す(*3)。塩酸など強酸性物質と混ぜると有毒ガスが発生するので注意。

ヨウ素化合物

皮膚や手術部位、口腔内などの消毒に使われる。口腔内に使うものに関しては、吸入による副作用の可能性を考慮して長期間にわたる連用は避けるのが望ましい。(*3)

過酸化物(オキシドール)

傷口や潰瘍の消毒、コンタクトレンズの洗浄などに使われる。毒性は低いが、長期にわたって広い範囲に使用するのは避ける。また、治癒組織の潰瘍化が生じるため、新たに表皮が形成された部位には使用しないこと(*3)

クレゾール石鹸液

殺菌力は高いが独特の強い匂いがあり、刺激性、毒性も強い。濃度や状況によっては火傷などを起こすことがある。近年、医療面においてはあまり使われなくなってきている。     
など

消臭浄化作用のある小動物飼養環境浄化剤。


いろいろな消毒方法がありますが、それぞれに対象となるものや有効性などが違ってきますので、状況に応じたものを極力安全な範囲でお使いください。また、人間同様、犬も昔に比べて弱くなったのではないかという声もあります。病気予防にこだわるあまり、清潔過ぎる環境で暮らすということは、ある意味、免疫力を下げてしまうことにもなりかねません。病気予防は大事ですが、何事も過ぎるは及ばざるが如し。消毒も適度に、ほどほどに。


出典および引用文献:
(*1)厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」
(*2)厚生労働省「日本薬局方」
(*3)日本医師会「消毒方法消毒薬一覧」

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