火車
宮部みゆき作品を読んだことがない人におすすめしたい小説は、彼女の初期の代表作で、長さもちょうどいいので「火車」です。休職中の刑事が親戚に頼まれ、彼の失踪した婚約者を捜すうちに、一人の女性の悲しい過去を知ることになる。クレジット・ローンという身近にあるものを題材に、ただ幸せになりたかっただけなのに闇に転落してしまった普通の人々を描きます。この作品が発表されてから20年以上経ったいまも、借金が原因で住居や家族、命を失う人はあとをたちません。制度は変わりましたが、普遍的な内容です。
刑事と息子の強い絆、一緒に謎を追う修理工の青年など“世の中も捨てたもんじゃないよね”と思わされるような脇役の存在が、暗い物語の中で救いになっています。なにより、なかなか姿を見せないヒロインの造形が秀逸!
ちなみにこちらの「火車」は、「このミステリーがすごい!」のベスト・オブ・ベストでも第1位に選ばれました。