土地活用のノウハウ/土地活用の基本とテクニック

見た目が9割、建物の印象を良くする賃貸経営の基本(2ページ目)

入居希望者が何人も内見に来られるのに、なかなか決まらない物件がありますが、それは物件を見たときの「印象」に問題があるのではないでしょうか。入居希望者の第一印象はインターネットや募集図面を見た時、第二印象は建物の前に立ったときで、ここが一つの分かれ目です。そして、部屋の中が第三印象で最終判断が下されます。それぞれの段階で、入居希望者の「心理」を理解することが重要で、そのポイントをお話しします。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

建物はオーナーさんを写す鏡

建物の印象

建物の印象はとても大事

建物はオーナーさんの人柄を写し出す鏡のようなところがあります。私はこれまで公益社団法人 東京共同住宅協会の会長として、たくさんのオーナーさんの相談を受けてきました。そうした経験を積む中で、今では建物の様子を拝見するだけで、オーナーさんがどんな方なのか、だいたいの見当がつくようになりました。

たとえばエントランスを挙げると、きちんと清掃されているか、整頓されているか、あるいは花などが飾ってあるか。建物全体の管理の状態では、修繕計画がきちんと実施されているか、鉄部のサビなどが放置されていないか、郵便ポストなど設備の傷み具合はどうか。安全安心のためにどんなセキュリティ設備を入れているのか。そうした様子を拝見することで、その建物のオーナーさんがどういった方なのか、だいたい想像がつくのです。

賃貸物件の管理が行き届いていないということは、オーナーさんがルーズな方なのか、あるいは良い管理会社と出会っていないかのどちらか、または両方です。荒れた建物のオーナーさんの多くは、ご自身が悩みを抱えています。悩みの内容はお金のこと、家族のことなどさまざまです。

反対に、しっかり管理されている建物のオーナーさんは、悩みも少ないものです。すみずみまで掃除が行き届き、エントランスに花が飾ってあるような建物は、オーナーさんのその建物への愛情が、訪れた人間にも感じられます。

「子は親の鏡」という言葉がありますが、子どもの姿を見てその子の親の姿が想像できるように、建物にもいろいろな状態があって、それはオーナーさんの姿を映し出しています。成功する賃貸経営には、オーナーさんの建物に対する取り組み姿勢が大切になってくるわけです。

印象を良くするための基本は「清掃」

建物の第一印象には、日常の清掃や整頓がかなりのウエイトを占めています。センスの良さを訴える上でもまず前提となるのは、建物と敷地が清潔で健全な状態を維持していることです。郵便ポストの周りにチラシが散乱していたり、エントランスに私物が放置されていたり、敷地内の雑草が伸び放題になっている状態は、確実に物件の印象を悪くします。

ある女性の前に2人の男性がいたとしましょう。1人は人間的には誠実な若者ですが、薄汚い身なりで髪の毛はぼさぼさでフケだらけ、服はよれよれでネクタイには食べ物の汚れがついたままといった様子。これでは第一印象からして大きなマイナスです。もう1人の男性が清潔感の感じられる身だしなみで、見た目にさわやかな印象だったとすると、それだけではっきり差がついてしまうでしょう。建物についても同じことが言えます。

私の知る成功しているオーナーさんの一人は、日頃の清掃に大変力を入れており、外からは見えない隙間も見逃さず、隅々まできれいに掃除しています。床ばかりではなく、壁も天井もピカピカにされています。

「清掃というのは、床だけを掃除することではありません。私の清掃は立体清掃です」とこのオーナーさんは、おっしゃっていました。「立体清掃」というのは良い言葉だと思います。日常の清掃が大切であるという点については、私も全く同感です。

賃貸経営における清掃は、自宅の清掃とはわけが違います。清掃も空室対策の一環であり、入居希望者に「掃除が行き届いている」という印象を与えなくてはならないからです。つまり誰が見ても「わあ、きれいだな」と感心させなければいけないのです。清掃一つをとっても、そうした発想で取り組むことが大事です。

成長企業はオフィスの清掃が行き届いています。これは社員の働く環境をベストな状態に保つという経営者の理念、また、その会社を訪れてくれたお客様にきれいな環境で歓待したいという、いわば「来てくださってありがとう」という感謝の気持ちを表してもいるのです。

賃貸物件でいうならば、来訪者を迎えるエントランス、入居者のみなさんが日常的に使うゴミ置き場や自転車置き場のすべてにおいて清掃が行き届いていなくてはなりません。同様に、私物を共用スペースに放置させないといった整理整頓も大事なことです。

清掃を怠ると、さまざまな問題が連鎖的に発生する

日常の清掃を徹底し、早め早めの再塗装やリフォームで建物や部屋の美しさを保つことは、空室対策であると同時に、最終的にはオーナーさんの悩みを減らすことにもつながります。きれいな室内にこだわって部屋を選ぶ入居者は、自分も部屋をきれいに使おうとするものです。逆にうす汚れた感じのする部屋を「家賃が安いから」と選ぶ入居者は、やはりご自身も室内の使い方が雑になりがちです。

そして「類は友を呼ぶ」というように、人というのはなぜか似たもの同士で集まる習性があります。花の好きな人同士で集まるように、遊び人は遊び人同士、犯罪者は犯罪者同士で集まります。お金持ちはお金持ちでサロンをつくっています。

もしオーナーさんが汚い環境が平気な人で、建物の掃除もきちんとせず、管理会社もそれに対して何の意見も出さなかったとします。そんな汚い建物に集まってくる入居者たちは、どんな人だと思いますか? そう、オーナーさんと同じように、汚いことに無頓着な人たちです。そういう人たちが集まると、部屋は汚し放題でろくに掃除もせず、平気でゴミを敷地内に捨てたりして、周囲はますます汚く乱雑になっていきます。

物件がそういう状態だと、きれい好きな人などはもう近づきません。汚れた環境を気にしない人は、多くの場合お金の管理にもルーズな人です。そういう人たちが集まると家賃の滞納にもつながっていきます。

建物の印象を良くする空室対策の基本が「清掃」であることを、くれぐれもお忘れなく。
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