着物・着付け/着物の基礎知識

こんなに違う!関東と関西の着物好み(2ページ目)

着物はその地域に住む人々の生活や慣習と共に発達してきた衣服で、その地方の風土に深くかかわっています。今回は、地域ごとの着物の好みの違いやコーディネートの好みについて考えていきます。

黒柳 聡子

執筆者:黒柳 聡子

着物・着付けガイド

足袋

関東vs関西

足袋にも好みがある

足袋を作る型も、東京(関東)型、京(関西)型の二つに大きく分かれています。 関東型は「粋」に見えるのが信条とされ、足が細く格好良く見えるようにわずかな表地を底に回し、全体的にすっきりと細めの足元になるように作られます。逆に関西型では丈夫であることを重んじ、傷みにくいよう、表地を底に回さず全体的にふっくらとした形に作られます。

 

家紋(女紋の存在)

家を表す家紋(「紋の基本と使いこなし術」参照)の他に、関西では「女紋」が存在します。「女紋」とは、家紋以外に女性のみが使うとされる紋の総称ですが、関東ではお嫁入りの道具に実家の父親の家紋を、関西ではそれとは別に女性から女性へと継承する「女紋」をつけることが一般的とされてきました。その理由としては、家系を重んじる関東に比べて、血筋を重んじる関西では、江戸時代には夫婦が離婚した場合には男の子は男性側に、女の子は女性側についたからという説や、関西の商家では外部から頻繁に有能な入り婿を迎えて家を継がせる女系相続が行われたためという説などがあります。いずれにしても、この風習は主に関西圏に存在するもののようです。


粋を追究する関東、そして雅はんなりを愛でる関西

ほかにも、細部にわたり関東と関西での違いが見られます。これらはすべて生活や慣習の違いによって生まれ、その価値観によって好みが決まり、実用的な部分での違いが生まれているのです。では、実際それがコーディネートや着物の違いにどう表れてくるのでしょうか? 大まかに言うと、足袋の例のように、関東では武家文化に代表される「粋」でシャープなものが好まれ、関西では公家の文化に代表される雅やかではんなりしたものが好まれています。この好みの違いがはっきりと見られるのは、「江戸小紋」と「京友禅」で、「江戸小紋」は淡色で渋い色のものが多く、シンプルなコーディネートをそして「京友禅」は明るく色鮮やかな色合いが使われるものが多く使われ柔らかな雅を表現するにのにもってこいの着物です。

好み=個性

先に述べたように、今は好みが平均化されている時代ですが、それは必ずしも良いことばかりではないような気がしてなりません。なぜなら、そこで作られ、生活や慣習と共に育まれ受け継がれてきたものは、それぞれの「個性」であるからです。この「個性」こそが、私達の祖先の魂です。そしてそれらを大切にするということ、受け継いでいくということは、私達が忘れかけている「日本人としての誇り」を大切にするということではないかと思うのです。

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