もらえる理由3)追加で年金制度を変更できるから
年金改正が今後も行われることも、破綻しない理由のひとつです。実は皆さんが「給付をさらに下げるとは、やはり破綻するのでは」「年金をもらう年齢を引き上げるとは、やはり破綻が近い証拠だ」と思っているのは半分正しかったとしても、「だからこそ、改正をすればどんどん破綻する可能性は遠のく」という半分の面も考える必要があるわけです。統計と数理を駆使しながら、年金制度は50年先(あるいはさらにその先)のことまで考えています。それでも人知の及ばぬところで社会の変化は生じます。そういうときは、どんどん見直しをかけていけば、破綻は遠のきます。
実は日本の年金制度は、目の前の給付がストップするような心配はまったくありません。世界には数カ月保険料収入が途絶えれば年金がストップするような先進国がたくさんありますが、日本では数年支払い続けられるほどのお金をすでに貯めてあるからです。このような国は実は他にありません。日本の年金制度が破綻するときには、おそらく世界中のほとんどの国の年金制度が破綻していることでしょう。
「破綻する」から「減るけどもらえる」に頭を切り換えよう
つまり、まとめてしまえばこういうことです。老後にもらう国の年金制度は「破綻はしない」が、「水準は下がる」と。
「どっちも同じじゃないか」というのは、間違いです。この両者には大きな違いがあります。もし破綻して全くもらえないリスクを想定するのであれば、老後のお金の準備は相当困難なものになります。おそらく個人的に1億円貯めるような覚悟が必要になるでしょうが、これは現実的な準備とはいえません。
国の年金は減るけどもらえる、と想定して老後の準備を考えれば様子は全く異なります。まず超長生きしたときの備えを国の年金に頼ることでお金の準備がラクになります。国の年金は死ぬまでずっともらえる仕組みですが、手元のお金はいつかなくなるからです。100歳に備えて全額自分で備えると準備額はほぼ2倍になります。これは無理です。
また、減ったとしても国の年金はもらえることで、そもそもの老後の準備額を減らすことができます。例えば平均的な世帯の年金水準であっても、平均的に老後を過ごせば5000~6000万円はもらえる財産です(知ってましたか?)。これがあるから、手元で自分で準備する金額を抑えることができるわけです。1億円は無理でも3000万円なら不可能ではありません。退職金や企業年金があれば、実質のノルマはさらに下がります。
国の年金制度について「破綻」「崩壊」と騒ぐのは、やじうま根性としてはおもしろいのですが、現実的にはあまり意味がありません。10代の学生ならいざ知らず、30代や40代のオトナが、破綻を真に受けている段階はそろそろ卒業すべきだと思います。
むしろ、「100%国を信じるほど愚かじゃないけど、100%疑うほどバカでもないぞ」というアタマを持って欲しいと思います。そのうえで、現実的に自分の老後に備える仕掛け作りを考えてほしいのです。「破綻」論では世の中が終わるような気分になりますから、老後のお金の準備をまじめに考える気になりません。しかし「減るけどもらえる」論であれば、備える意識は持てます。
自分の老後のことをちゃんと、しっかり、考えていくために、そろそろ国の年金についてまじめに考えてみてはどうでしょうか。