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母親にとって行事とは……行間の深読みと空回りの渦!

親子

行間を読むとか暗黙の了解とか、母も大変…


復啓 フジワラ様

なんと味わいのあるエピソード。ドングリ組たるアイデンティティをぶつけた入魂の成果が鮮やかに玉砕する様を想うにつけ、母子の心情を慮って溢れる涙が止まりません。もうこの年になると目ではなく鼻から流れ出る涙を拭いつつ、卒園卒業にまつわる想い出が走馬燈のように駆け巡るロンドンの木の芽時です。

そうですよね、誰も教えてくれませんよね「行間」。聞いてませんよね「暗黙の了解」。同調圧力方面に耐性の高い日本人の集団は、「学校」とか「会社」とか「満員電車」とか、生命の危険を感じるほど狭い面積にぎゅうぎゅうに押し込められた時こそ、ここぞとばかりにハイスペックな能力を発揮します。

新興国の追随を許さぬ謎の先端機能満載のアンテナを伸ばし、世界に誇るスパコン「京」並みの情報処理能力で、不可視かつ無味無臭の空気を読むのです。さすが21世紀未来の子! 

幼稚園からのお手紙に「華美でない、平服に近いもの」って書いてあったら、文字通り華美でない平服に近いもの着てきゃ万歳じゃないですか。何一つ恥じることはないです。「平服」とは「式服・礼服に対して、平素身につけている衣服。ふだんぎ」って、うちの明鏡国語辞典(大修館)にも出てます。

お手紙には「平服」って買いてあるのにどーしてみんな同じ入学式用スーツなの? 異様!! 入学式用の衣装って式服だろーがっ! 守ってない人たちの方が浮いて然るべきなんです。なのに「暗黙の了解」がある裏表、或いはホンネとタテマエ。あぁ怖い。

カジュアルめの結婚披露宴や、偉い人のなんちゃらパーティーで招待状に「平服」と記載しながら、「あーらあの人本当に平服で来たわ。常識のない人ねー」って後ろ指さしちゃうような、不健康な心のありようは如何なものだろうか。いやはや、幼稚園の卒業式然り、日本の「お式」なんて、総じて行間、深読み、裏読みと噂の大渦巻きですよ。式の主役(お子)そっちのけで、裏方(母)が髪の毛振り乱してきりきり舞い。

「何故にここまで母はどうして子に、或は子育てに支配され、自己犠牲のコミットをせにゃならんのか」。そのご指摘、さすがご炯眼です。

日本社会にはどうやら「『いいお母さん』ホイホイ」が仕掛けられているのですよ。いいお母さんを志している人はもちろんのこと、まったく守備範囲外にある人もいい匂いで誘い込む。幸せな錯覚ができる有効成分が盛られていて、抗いがたいことこの上ない上に、ちゃんとお仕事をクリアできたら満場の拍手で「よくやったわ! あなたは本当にいいお母さんだわ!」って褒めてくれるのです。

ホイホイの設置場所は産む前の心構えから始まって、乳のやり方抱っこの仕方、「コレがあれば大丈夫」グッズ、行事ビジネス、あらゆる「○○式」と名のつくもの、教育方面、あぁ私もそれらの煽り文句にどれだけ魂を吸われ、散財し、労力を費やし、ひとりで勝手に擦り減ってきたことか! だって、「いいお母さん」なんて幻想じゃん、と悪口叩きつつ実は憧れる、(旧)子育てオタクなんだもん!

「いいお母さん」は家事も子育ても夫育ても上手で、空気も行間も読むし将来のニーズも読むらしいです。一寸先は闇の現世で数十年先のニーズを読むって、どんだけエスパーなんだか。

でも、それほどに日本の子育てとは女の人を支配するし、それが当然視されてきたんですね。卒業式の服装で母のフジワラさんがその責を一身に受けて落ち込む、なんてのも、本当なら感じなくていいはずの感情なんです。

次はいっそ、「平服」って書いてあってもコスプレして行くくらいの「変質母」ぶりを炸裂させ、卒業ブレイクスルーを狙ってみましょうかね。どすか?

再拝
カワサキ



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