紋の数と付ける位置
留袖は五つ紋付の代表。左は正面から見たところで両側に胸紋、左は後ろ姿で背中中心と両後ろ袖にそれぞれついている
着物に紋を付ける時には、一つ、三つ、五つと数が決まっています。それぞれ、「一つ紋」「三つ紋」「五つ紋」と言って、格の高さは「五つ紋>三つ紋>一つ紋」です。五つ紋は、背中中心、両胸、後ろ袖の5ヶ所に付け、それぞれを「背紋」「抱き紋」「袖紋」と呼びます。これらは留袖、喪服、黒振袖などに用います。
三つ紋は、背中中心、後ろ袖の3か所につけ、色留袖、色無地などの略礼装に用います。そして一つ紋は、背中中心だけに紋をつけるもので、用途は三つ紋と変わりませんが、格という面ではこちらの方がよりカジュアルになります。
大きさは、男性は直径約4cm、女性は約2cmが標準サイズですが、おしゃれ紋ならば目立つように大きくして、ポイントを作ってもよいでしょう。
紋は格上げアイテムのひとつと捉える
前述のように、少し前の時代までは「紋」といえば、家を象徴するものでした。特に女性にとってはその財産権を主張する意味を持ったり、家族間の揉めごとの元となったりする程重要なものだった時代もありました。現在でもその流れはあるものの、レンタルやリサイクルが当たり前の世の中になり、その形自体の意味も薄れてきています。実際、自分の家の家紋が分からないという人も多いのではないで しょうか。今や着物の紋は、付いているか付いていないか、ということが重要なのではないかと思います。着物に紋を付けるということは、着物の格(「着物の種類と格」参照)を上げるということでもあります。例えば、留袖は着て行くシーンが限られているため、紋が付いてるのが当然という感覚ですが、色無地に紋を付けると何もついていない色無地よりも格が上がり、普段着として使用するには少し格式ばって見えます。それを普段着としても使用したいなら、前にあるような縫い紋や貼り付け紋で対応するなど、その着物をどのような場面で着たいのかを考慮に入れてから紋を付ける付けないを選択することも大切です。
逆に言えば、紋一つでTPOに合わせて格の微調整ができるということ。今の時代、「紋=家紋」というイメージよりも、紋は装いの格を上げるアイテムのひとつと捉える方が正解なのかも知れません。格の問題は分かりにくく、着物を敬遠していまう原因でもあるのですが、一方でこれこそが和装の面白いところでもあるのです。