糖尿病/A1C・血糖値管理・血圧計・血糖測定器

血糖管理に欲しいのに、手が届かないCGMS

1型糖尿病を発症した少年から「15分毎に自分が糖尿病であることを思いだしてしまう」と聞かされて胸が詰まったことがあります。そんな時はリアルタイムの血糖値を見て安心できればいいですね。

執筆者:河合 勝幸

採血なしで血糖値が測定できる機器が保険適用

CGMS-Gold

CGMS-Gold. 装着ミスのアラームはありますが、低血糖のアラームはありません。一日4回血糖測定をしてその数値を入力します。このセンサーは血液ではなく皮下の間質液を測定するので、その補正(校正)を行います。写真提供「日本メドトロニック」

採血せずに血糖値をいつでもモニターできれば、血糖コントロールに人生を賭けている糖尿病者(特に1型)にとって大いなる救いです。

じつはその装置はもう、目の前にあるのです。先進国アメリカには、低血糖時のアラーム機能を強化した7歳以上の子どもやティーンエージャー向きのモデルまであります。でも、わが国では医家向け医療機器として抱え込まれていて、私たちの手が届きません。

我が国ではやっと2年前に、患者がリアルタイムに自分の血糖値を読むことが出来ない、ブラックボックスのようなモデル、日本メドトロニックの連続血糖モニタリングシステム(以下CGMS)「メドトロニック ミニメド CGMS-Gold」が保険適用されました。

これは、あくまでも医療従事者に患者の連続3日間にわたる血液変動パターン情報を提供して、よりよい治療方針を得るための機器です。このデータを参考にして、インスリン注射のタイミングや単位、食事・運動のアドバイスがしやすくなります。

アメリカでも10年前のCGMS導入時にはこのタイプが使われました。
リアルタイムに血糖値を知ることが出来ないので、じゅうぶんに経験を積んだ患者にとって不満が残りますが、それでも大きな成果を上げることが出来ました。

1型糖尿病の人は就寝中に血糖が下がりすぎることが多いので、そのパターンが分かれば夜間のインスリンを減らせますし、その人の食事や運動中の血糖変動の傾向を知ることは、自己管理を容易にしてくれます。

今日、食後血糖値とは、食事を始めた時からカウントして、2時間後の血糖値を指しますが、以前は1時間値も使われていました。なぜ1時間値が使われなくなったかと言うと、食後の高いピークに患者が過剰に反応してインスリンを追加してしまうミスを防ぐというのも理由の一つにありました。その意味では、医師も患者もリアルタイムの連続血糖値に対応するノウハウを得るために、まずこのブラックボックス様のCGMSから始めるのも理にかなうようです。

しかし、あくまでも目標はインスリンポンプとCGMSを閉回路でシステム化して、人工すい臓に一歩でも近づけることですから、常に最先端の装置を使いたいものです。

例えば、メドトロニック ダイアビティーズ(米)の最新モデルMiniMed Paradigm REAL-Time Systemは、インスリンポンプがCGMのレシーバーを兼ねていて、センサーと一体化したトランスミッターから5分毎に電波で血糖値が入力されますし、簡易血糖測定器で測った血糖値による校正も、特定の血糖測定器からは電波で入力できますし、マニュアル入力もできます。

血糖値の上昇・下降のトレンドが分かりますから、前もってセットしておいた上限値、下限値に達するであろう30分前にアラームが鳴る優れ物です。これなら余裕を持って対応することが出来ます。

このCGMSをネットで価格を調べてみたら、インスリンポンプは別として、3日間使えるセンサーが35米ドル、トランスミッターが999米ドルというのがありました。このモデルの購入は医師の処方が必要です。センサーを3~5日間使えば、一日あたり600円位ですから手が届かない価格ではないですね。

日本のCGMSの保険適用施設は?

さて、わが国のCGMSの保険適用施設には次のような基準が定められています。

(1) 糖尿病の治療に関し、専門の知識及び少なくとも5年以上の経験を有する常勤の医師が2名以上配置されていること。

(2) 持続皮下インスリン注入療法(CSII)を行なっている保険医療機関であること。

現行のメドトロニック ミニメド CGMS-Goldは、患者がデータをダウンロードできませんからしかたがありませんが、欧米で7歳の子どもでも使っているリアルタイムCGMSの導入にはこの施設基準は問題になりそうです。

ただでさえ、ハードルが高すぎる日本のインスリンポンプ療法(CSII)にこのCGMSを縛り付けたら、欧米で普及しつつある患者自身がモニターするリアルタイムCGMSは私たちの手にはまず届きません。
リアルタイムCGMSがなければCSIIも普及せず、CSIIの患者にリアルタイムCGMSを手渡そうとしなければ循環的に相互を制限してしまいます。CSIIクリニックに限定せずに、意欲のある医師が処方できるようにすべきです。

リアルタイムCGMSを有効に使うには、患者自身のモチベーションとトレーニング、教育が必要です。それは、そのまま医療サイドにも要求されることですから難しいでしょうが、日本の糖尿病治療の実力アップになるはずです。

私もCGMSを体験してみたいのですが、残念ながら実施施設の一覧サイトはありません。まずは担当医に相談してみてください。

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