不動産売買の法律・制度/不動産に欠かせない「道路」の知識

都市計画道路による建築制限とは?

都市部ではかなり以前に道路の新設や拡幅が計画されながら、それが実施されていないケースも少なくありませんが、都市計画道路にかかる敷地では、住宅などの建築が一定のものに制限されます。その建築制限の内容とあわせ、都市計画道路がある土地や住宅を購入するときの注意ポイントなどをみていきましょう。(2017年改訂版、初出:2012年1月)

執筆者:平野 雅之


都市計画道路のお知らせ看板

都市計画道路は、その計画が立てられてから事業が実施されるまでたいへん長期間になることが多い

既存の道路を拡幅したり、新たに道路を造ったりする「都市計画道路」は、都市のあちこちに存在しています。

これらの多くは日本の戦後から高度成長時代にかけて計画が定められたものの、現在まで長期間にわたり実現していない路線も少なくありません。

しかし、計画があることによって住宅の建築などに制限を受けることになり、土地の評価にも影響を及ぼしますから、その計画内容には十分な注意が必要です。

また、計画そのものは敷地にかかっていなくても、新しく道路ができることによって周辺環境が変化することもありますから、土地や住宅を購入するときには、近隣エリアにおける「都市計画道路」の有無にも気を付けながら検討したいものです。


都市計画道路による建築制限

都市計画道路にかぎらず、都市計画で定められた都市施設(公園、緑地、交通施設、公共施設など)の区域、または市街地開発事業の施行区域内に建築物を建築しようとするときには、都市計画法第53条の規定により、あらかじめ都道府県知事(指定都市の場合は市長)の許可を受けなければなりません。

都市計画道路の場合、次のいずれにも該当するものは原則として許可されます。

階数が2以下であること
地階を有しないこと
主要構造部(壁、柱、はり、床、屋根、階段)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造であること

ただし、非常災害時のため必要な応急措置として実施するものや、階数が2以下で、かつ地階を有しない木造建築物の「改築」または「移転」については許可が不要とされています。

ここで重視されるのは「容易に移転し、または除却することができるものであること」であり、事業が実施されるときに補償費などを増大させないことも目的の一つとなっています。

なお、都市計画道路には「計画決定」と「事業決定」の二つの段階があり、建物の新築や増築が許可されるのは、あくまでも「計画決定」のときにかぎられます。「計画決定」とは、事業に着手する時期などがまだ具体的に決まっていないものです。

それに対して、事業の着手が決まった「事業決定」の段階では、土地収用や立ち退き交渉、実際の道路の築造工事に取り掛かるため、災害時の応急措置的な建築などを除き、新たに建物を建築することはできません。

また、計画決定段階の都市計画道路予定地で、建物の新築などが許可されなかった場合には、土地所有者(建築申請者)からの請求に基づき、都道府県知事(指定都市の場合は市長)がその土地を時価で買い取ることになっています。


都市計画道路の見直し

戦後の計画決定から約60年後に事業が開始された「東京都市計画道路環状第2号線」の虎ノ門・新橋間のような例もありますが、多くの都市計画道路は右肩上がりの社会経済が続くことを前提に計画され、現在のような低成長時代、景気の長期低迷、国や自治体の財政状況悪化、さらには将来における人口減社会のニーズにそぐわないものも少なくありません。

自治体によって大きく異なるでしょうが、都市計画道路の整備率が50%に満たず、長期間にわたり整備されていない路線が数多く残されているところもあるようです。

以前であれば、一度決めた公共事業の計画は取り消さないといった風潮も強かったのですが、社会情勢の変化に伴い、近年では長期未整備都市計画道路の見直しに取り組む自治体も増えつつあるでしょう。

そのような自治体では一定のガイドラインなどにもとづいて見直しが実施され、計画の変更や廃止、または存続が決定されますが、これが廃止になれば当然ながら、それまでかけられていた建築制限は解除されることになります。


都市計画道路予定地における建築制限の緩和

長期間にわたり事業化がされない都市計画道路では、その実施時期が不明確なまま地権者による土地の有効利用を妨げることになり、多くの問題を抱えているのが実情です。

東京都区部では1981年以降に都市計画道路における建築制限の緩和規定を設けていましたが、商業地域または近隣商業地域で容積率が300%以上などその要件は厳しく、住宅地にはあまり適用されないものでした。

他の一部の自治体でも1985年以降に緩和規定を運用していたところがあるようです。

しかし、その後の社会情勢の変化などに伴い、2004年4月から新たな基準による建築制限の緩和を取り入れる自治体が多くなっています。

緩和規定の要件は次のとおりですが、自治体によっては少し異なる場合もあるでしょう。

当該区間の事業の実施が近い将来見込まれていないこと
市街地開発事業(区画整理、再開発など)等の支障とならないこと
階数が3、高さが10m以下であり、かつ地階を有しないこと
主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造であること
建築物が都市計画道路区域の内外にわたる場合は、将来において、都市計画道路区域内の部分を分離することができるよう設計上の配慮をすること

なお、この場合でも「容易に移転し、または除却することができるものであること」が前提となることに変わりはありません。

この緩和規定が適用される自治体では、当分の間は事業化される見込みがない都市計画道路のときに、その予定地にかかる敷地でも3階建て住宅を建築することができます。


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