あれはダメ、これはダメ、という消去法はダメ
「読めない名前はイヤだよね。説明がしにくい漢字もダメ……」
ある名づけ相談に若いご夫婦が来られ、こんな希望をおっしゃいました。「私の名前がなかなか読んでもらえなかったので、読めないような名前は絶対にイヤなんです。それに説明の難しい字は絶対に使いたくないんです。年寄りみたいな古くさい名前も子供がかわいそうです。」
「それは正しい考えですね。ただ、それは一般的な注意事項で、だれもが守らなければならないものです。具体的な名前を作るためのご自身の条件というのはありますか?」と私が尋ねると、返ってくるお返事は、「ア行の名前はきらいです。女の子でも美の字は使いたくありません。男の子でも太で終わるのはイヤです」など。このように、したくないことを並べる人はよくいらっしゃいますが、でもそれでは具体的な名前はいつまでたっても作れないのです。
名づけの希望や条件は肯定文で
「今おっしゃったことは、一応意味はわかります。それを全部ひっくり返して肯定文にしたら、どういう表現になりますか? たとえばこんな響きの名前なら好きだ、というふうに。それがわかれば名前が出てきますよ」と提案させていただきました。
するとしばらく考えてから、お二人は相談しながらいろいろな名前の候補をあげはじめました。「そうですねえ、ハルカちゃんなんかどうかしら。ホノカちゃん、ユウカちゃんもいいかな。男の子だったらハルトとかユウトもねえ」
このように言っていただければ、プロはすぐご希望がわかります。
「女の子はカで終わる名前、男の子はトで終わる名前がお好きなようですね」
「あ、ホントだ。みんなそういう名前になってる」とご本人もはじめてご自分の好みがはっきりしてきました。こうなればしめたもので、話は簡単です。カで終わる名前、トで終わる名前のリストをさしあげたところ、「わあ、いい名前がたくさんある」と喜んでお帰りになりました。
名づけの希望、条件というのは、必ず肯定文で考え、具体的にいくつか書き出していけば、気がつかなかったご自分の好み、ホンネというものが見えてくることがあります。ホンネがはっきりすれば絶対に迷うこともなく、後悔のない名づけができるのです。