「自分の足で歩く」ことの大切さ
私の母は現在、大阪市内の特別養護老人ホームに入居しています。父も以前、同じホームに入居していたのですが、2010年の2月に肺炎で亡くなってしまいました。どちらも認知症を中心とした精神状態の悪化が入居の最大の理由だったのですが、身体的な衰えも急速に進んでいきました。
父については、入居後に高熱を出したり、転倒したりした結果、スタッフの方の身体にしがみつきながらでしか歩けなくなり、その後すぐに車いすなしでは暮らせないように。認知症のため「自分は足腰が弱っているので、何かにつかまって歩く必要がある」ということ自体を忘れてしまうので、事故防止のためにはどうしようもなかったのです。結局、歩かなかくなったことから、父の足腰は廃用症候群のためにどんどん弱り、最後はほぼ寝たきりの状態でした。
母についても、向精神薬の副作用もあって、足元がふらつくようになりました。転倒して腕や顔の骨を折り、救急車で病院に運ばれたのも、一度や二度ではありません。このままでは父の二の舞になると考えて、私が母にプレゼントしたのが幸和製作所のシルバーカー「ニューウォーキングIII」。このシルバーカーは母の宝物となり、大事に使い続けています。
自立した生活のためには、自力で歩くことはとても重要。歩けなくなると、どうしても家に引きこもりがちになって、社会との交流が失われていきます。その結果、足腰が一層弱ってしまうだけでなく、暮らしのなかでの刺激が減ることで、認知症などの発症・進行といった心配も出てしまうのです。
私の父のように「どうやって歩けばいいのか」が理解できない場合は別ですが、足腰が弱った人なら、歩行補助杖、シルバーカーや歩行器を積極的に利用し、歩く機会を増やすように心がけましょう。
シルバーカーで国内最大手。
介護用品の総合メーカー「幸和製作所」
株式会社幸和製作所は、昭和40年の創業当時は乳母車やベビーカーの製造を行っていたそうです。その後、創業者が街中で高齢者の方がベビーカーを杖代わりにつかっている様子を見て、シルバーカーという商品を発案。昭和45年に日本初のシルバーカーを発売して以来、業界トップを走り続けています。
平成19年には「TacaoF(テイコブ)」という新ブランド名を発表。シルバーカーにとどまらず、介護用品の総合メーカーとしてさまざまな商品を提供しています。商品ラインアップは「歩行関連」「入浴関連」「排泄関連」「床周り関連」「食事関連」「健康管理関連」の6つに大きく分かれ、それぞれ個性的な商品を開発・販売。これらについては、また機会をみてご紹介させていただきたいと思います。
幸和製作所ではシルバーカーのラインアップを大きく3つに分けています。それぞれの特徴は下記の通りです。
1.コンパクトタイプ
軽量でコンパクトなシルバーカー。狭い道での歩行や、車や電車などへの持ち込みの際に便利です。
【メリット】
- サイズが小さくて軽い。
- 小回りが簡単。
- 持ち運びしやすい。
- おしゃれなデザイン。
【デメリット】
- 荷物を運ぶための袋が比較的小さい。
- 座面が比較的小さい。
- 安定性が多少劣る。
2.ミドルタイプ
コンパクトタイプとスタンダードタイプ両方の特徴を持った、お手頃サイズのシルバーカー。
【メリット】
- 大きすぎず、小さすぎない、扱いやすい大きさ。
- 荷物を運ぶための袋が適度に大きい。
- 重すぎず、軽すぎない車体。
3.スタンダードタイプ
歩行時の安定性が抜群なシルバーカー。収納用の袋も大きく、座面も広いのでゆったりと座れます。
【メリット】
- 安定性に優れている。
- 座面が広く、ゆったりしている。
- 荷物を運ぶための袋が大きい。
【デメリット】
- 本体が比較的大きいため、重い。
- 本体が大きい分、小回りがしにくい。
3つのタイプごとにさまざまな違いがあるので、購入の際には、使用場面や頻度などをよく考えて選びましょう。近所への買い物にはミドルタイプ、電車に乗ってのお出かけにはコンパクトタイプなど、複数のシルバーカーを使い分けるのもオススメです。
>幸和製作所のシルバーカーの選び方については、こちらへ
幸和製作所がめざすもの
シルバーカーで業界トップを走り続ける幸和製作所は、今後、どういう方向に進んでいくのでしょうか? 玉田秀明社長に、気になる部分を直接伺いました。
横井「シルバーカーの開発について、現在、力を入れている点は?」
玉田社長(以下、玉田)「機能性はもちろんですが、色や柄、全体的なデザイン性に力を入れています。シルバーカーなどの介護用品の場合、本人は気が進まないのに身体的な事情から仕方なく使っていたり、家族などから使わされている人が少なくありません。介護される方自身が『これは自分で使いたい』と思えるような、おしゃれなデザインのものを提供したいですね。そして、シルバーカーなどを使って、自らの足で歩いていただくことで、どんどん元気になってほしいんです。あと、シルバーカーは、どうしても女性向けのイメージが強いので、男性向けデザインの商品を充実させて、男女誰でも当たり前に使えるものにしたいと思っています」
横井「まずは、積極的に使う気になってもらうためにデザインを重視している、と。ほかにも注力されている点はありますか?」
玉田「商品を実際に使用されるのは、健康体とは言えない方ですから、当然ながら安全・安心面にはできる限りの取り組みを行っています。材料仕入れから製造まで厳しいチェック体制を設け、シルバーカーや歩行車、ショッピングカートなど多くの商品でSGマークを取得しています」
横井「利用者側からすると、安全・安心であることは大前提ですからね。メーカーとして喜びを感じるのはどういうときですか?」
玉田「やはり一番嬉しいのは、利用者の方に喜んでいただけたときですね。アンケートはがきなどで『(シルバーカーが)軽くて嬉しいです』『重いものを買ったときに便利で、大変喜んでいます』といったご意見をいただくと、今の仕事をしていて良かったな、と心から思います」
横井「今、介護で悩んでいる人にメッセージをお願いします」
玉田「幸和製作所のブランド『TacaoF(テイコブ)』は、『take care of(…のお世話をする)』という思いから付けたものです。ただ生活のお世話をするだけでなく、みなさまの心が豊かになるように、心のお世話をしたいと考えています。介護が少しでもラクになり、介護する方、される方がともに心豊かになっていただくために、弊社の商品がお役に立てれば、こんなに嬉しいことはありません」
商品を利用する方(要介護者)はもちろん、介護する家族や介護職など、介護に関わる方すべての心を豊かにしたいという玉田社長。その思いがある限り、幸和製作所はこれからも魅力的な介護用品を生み出していくことでしょう。
24時間365日、要介護者の生活を支えたい
今後の展開を伺うと、「シルバーカーだけでなく、介護用品のすべてのカテゴリーで業界トップをめざしたい。目標は大きなほうが良いですから」とのこと。この目標は、24時間365日、要介護者の生活を支えて「愛と感動と勇気」を与えていきたいという思いから、自然にめざすべきものになったそうです。
さらに「介護で悩んでいる人は、日本にしかいないわけではありません。国内を大切にしながらも、これからは世界に目を向けて積極的に展開していきたいですね」と語る玉田社長。その力強いお話を伺っていると、世界各地の介護現場で幸和製作所の介護用品を目にする日も近いような気がしました。
>シルバーカー・車いす/福祉用具のパイオニア 幸和製作所
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