前ページでは賃貸併用住宅の注意点をあげてきました。最も重要なことは、「賃貸」である以上、「経営」の視点が不可欠であるということです。これをクリアできないものであれば、将来的に大きな苦労を背負い込むことになりかねません。ですから、依頼先、言葉を換えると「パートナー」選びも非常に大切な要素となります。
経営の視点、パートナー選びが重要
近年、「敷金・礼金ゼロ」、「更新料なし」などといった物件も増えてきた。これは逆に言うと、建物の老朽化などで、こうもしないと入居者が確保できない物件が増えてきているということ。空室・家賃低下リスクなどへの長期的な対策にノウハウのあるパートナー選びが必要だ
ハウスメーカーの中には、一般的な住宅だけでなく、賃貸住宅事業も経営の柱の一つとしている企業があります。そうした中には、賃貸住宅の管理運営をするグループ企業を独自に有し、全国規模のネットワークがあるケースもあります。
賃貸専門メーカーも有力な選択肢の一つ。中には、彼らの特徴は賃貸住宅に専門に従事しているだけあって、マンスリー賃貸やゼロゼロ物件(敷金・礼金ゼロのこと)といった、賃貸経営に関する多彩なノウハウやアイデアを持っていることです。
地域系の企業群の特徴として、それぞれの地域の実情やニーズをよく知っていることがあります。ただ、借り上げや家賃保証の制度なども様々。ハウスメーカーの中には、賃貸住宅にあまり強くない企業もあるなど、依頼先には様々な個性があることを付け加えておきます。
オーナー住戸のノウハウもポイントに
今回のメインテーマは賃貸経営ではなく、賃貸併用住宅です。ここには、賃貸経営のノウハウはもちろんのこと、オーナーの住まいとしての高いノウハウが求められることに注目した方がいいでしょう。賃貸併用住宅の難しさは、単に賃貸住戸だけにとどまらない。オーナー住戸の居住性や満足度も含めた検討が必要になってくる。ただ、ハウスメーカーの場合は、常に一般的な住宅を手がけている分、そのノウハウに優れている点は指摘できそうだ
さて、ここまで賃貸併用住宅は都市部の、しかも立地条件の良い場所だけ、と書いてきました。しかし、少しだけ条件を緩くすると、多少不便なエリアでも建築が可能となります。その条件とは、「建設費全て(もしくは多く)を賃貸収入でまかなわないこと」。
表現を変えると「建築費の一部を賃貸収入でまかなう」という発想であれば、賃貸併用住宅が成り立つ場合があります。例えば、それはある程度の賃貸需要が見込めるエリアで、広めの敷地に2つの住戸からなる建物を建てるというスタイルです。
一つの住戸にはオーナーが住み、もう一つの住戸は賃貸住宅とする考え方。賃貸住戸はファミリー向けとすれば、安定的に入居需要が見込めることが考えられます。例えば、お子さん1人の3人家族で新居を建てることを検討されている方にお勧めです。
3人家族なら、特段に広い住空間を必要とはしませんし、賃貸部分から収入が入ればその分をローン返済に回すことができ、余裕のある暮らしが可能となります。ただいずれにせよ、賃貸併用住宅については、「客」づけをできるパートナー選びが、満足度を左右する大きなポイントになります。
都市型住宅について(1) 基本編
都市型住宅について(2) 二世帯住宅の「宿命」
都市型住宅について(3) 屋上利用(緑化)を考える
都市型住宅について(4) 狭小地克服のための設計術