Q:
子どもの名前に「汰」という字を使っています。最近インターネット上で「『汰』はいい漢字ではない。名づけに使わないほうがいい」と書かれているのを見つけました。私は辞書で調べ、良い漢字だと思ってつけましたが、世間では汰は悪い意味にとらえられてしまうのですか? また、汰に「濁る」「あらう」の反対の2つの意味があるのはなぜですか?
A:
漢字というのは何千年もの間にいろいろな意味が生じており、時には正反対の意味が出てしまうこともあります。たとえば「止」という字は「歩く」「とまる」の両方の意味があり、今の私たちが使っているのは「とまる」の方の意味です。漢字はもっとも基本的には、はじめにどのような成り立ちで、どのような意味で作られたかという、原初の意味が重要です。これこそが漢字の幹となる部分で、これがわからないと漢字はわかりません。
しかし辞典というのは、いろいろな時代や地域で使われた意味が文章で並べられているだけです。その内容はたしかに精密、高度な研究によって書かれたものですから信用できるものですが、その字自体の原初の成り立ち、意味というものは、辞典で調べようとしても、辞典はそのように作られてはおらず、簡単にはわからないのです。
「汰」の字の原初の意味は次のようになります。最も古い象形文字は、手足を広げた人と水を描いた絵と考えられます。手足を広げた人の絵は、どなたもご存じの通り、「大」の字に変化して今も使われています。つまり汰の字は水と、広げることを合わせて、「水が大量にある」という意味をあらわしているのです。
汰の字の最古の字は、「太」の字の象形文字とも似ています。ですから本来はサンズイをつけてもつけなくても同じような意味だったと思われます。
そういうわけで、男の子の名前にタという字をつける時、「太」にしようか、「汰」にしようかと迷う人もいますが、意味では比較はできず、強いて言えば太の字の方が画数が少ないので書くのは楽だ、という程度のちがいです。ただ一般的には、漢字2文字の名前では「汰」の字も使われますが、○太郎というような3字名前の場合はほとんど太の字が使われ、汰の字はあまり使われることはありません。
汰の字は、水が豊富なことから、「はなはだしい」「洗い流す」「余分なものを取り去る」という意味で使われるようになり、物を洗えば当然水は濁りますから、「濁る」の意味も含み、また余分なものを取り去ることから「淘汰」という熟語も生まれました。以上のように、字の成り立ちがつかめれば、汰の字自体にはもともと悪い意味は無いということがわかります。
子どもの名前に「汰」という字を使っています。最近インターネット上で「『汰』はいい漢字ではない。名づけに使わないほうがいい」と書かれているのを見つけました。私は辞書で調べ、良い漢字だと思ってつけましたが、世間では汰は悪い意味にとらえられてしまうのですか? また、汰に「濁る」「あらう」の反対の2つの意味があるのはなぜですか?
漢字は作られた時の原初の意味が基本
漢字というのは何千年もの間にいろいろな意味が生じており、時には正反対の意味が出てしまうこともあります。たとえば「止」という字は「歩く」「とまる」の両方の意味があり、今の私たちが使っているのは「とまる」の方の意味です。漢字はもっとも基本的には、はじめにどのような成り立ちで、どのような意味で作られたかという、原初の意味が重要です。これこそが漢字の幹となる部分で、これがわからないと漢字はわかりません。
しかし辞典というのは、いろいろな時代や地域で使われた意味が文章で並べられているだけです。その内容はたしかに精密、高度な研究によって書かれたものですから信用できるものですが、その字自体の原初の成り立ち、意味というものは、辞典で調べようとしても、辞典はそのように作られてはおらず、簡単にはわからないのです。
「汰」の字の原初の意味は次のようになります。最も古い象形文字は、手足を広げた人と水を描いた絵と考えられます。手足を広げた人の絵は、どなたもご存じの通り、「大」の字に変化して今も使われています。つまり汰の字は水と、広げることを合わせて、「水が大量にある」という意味をあらわしているのです。
汰の字の最古の字は、「太」の字の象形文字とも似ています。ですから本来はサンズイをつけてもつけなくても同じような意味だったと思われます。
そういうわけで、男の子の名前にタという字をつける時、「太」にしようか、「汰」にしようかと迷う人もいますが、意味では比較はできず、強いて言えば太の字の方が画数が少ないので書くのは楽だ、という程度のちがいです。ただ一般的には、漢字2文字の名前では「汰」の字も使われますが、○太郎というような3字名前の場合はほとんど太の字が使われ、汰の字はあまり使われることはありません。
汰の字は、水が豊富なことから、「はなはだしい」「洗い流す」「余分なものを取り去る」という意味で使われるようになり、物を洗えば当然水は濁りますから、「濁る」の意味も含み、また余分なものを取り去ることから「淘汰」という熟語も生まれました。以上のように、字の成り立ちがつかめれば、汰の字自体にはもともと悪い意味は無いということがわかります。