法律の定めはなくても間違いは間違い
「礼」と書いて「ペコ」と読む。あて字の名前はOK?
名前の読み方については特に法律上に定められていませんので、「どう読ませてもいいのだ」と誤解する人もいますが、戸籍関係の法律というのは刑法とちがって、手続き、実務について定めたものであって、常識はずれのことをする人を想定して罰するためのものではないのです。つまり正しい読み方の名前にすることは、親の良識にゆだねられているということです。
たとえ法律に定められていなくても、漢字には決まった読み方があり、「どう読ませてもいい」ということではありません。間違いは間違いです。法律で決められなければ正しい読み方の名前がつけられない、というのでは親としてあまりに情けないことです。間違った読み方の名前は「あて字」と呼ばれたりして、あたかも名づけの一種のように思われることさえありますが、それは単純な間違いであって名づけの方法の一つなどではありません。
ただ名前の読み方に法律の定めが無いということは、役所にチェック義務が無いことになり、名前のふりがなが間違っていても出生届は受理されることも多いのです。でも勘違いしてはならないのは、役所は余計な仕事をしたくないのでチェックをせずに受理しているだけで、そのふりがなが公式に認められた、ということではありません。同じふりがなで他の役所へ出したなら、必ず受理されるという保証もないのです。
正しくても読めない名前がある
ただ名前の読み方が正しいからといって、必ずしも使いやすい名前であるとは限りません。もちろん音、訓、名乗りのいずれかの読み方なら正しいわけですから出生届は必ず受理されますが、それが実社会で使いやすい名前かどうかは別の話なのです。たとえば「陽太」という名前を見れば、誰もがヨウタとしか読まないでしょう。名乗りでいえば陽はアキとも読み、太はヒロとも読みますから、陽太をアキヒロと読ませても正しい読み方ではありますが、正しくても人に読めなければ社会生活で支障がでますから、大きな難点のある名前になってしまいます。また正しい、間違いということにも、実はグレーゾーンがあります。たとえば「玲奈」という名前は厳密にはレイナと読みますが、これを縮めてレナと読ませる名前も最近は多くなっています。そもそもレと読む漢字を探してもありませんから、レイという漢字をレと読ませるしか方法がないのです。そしてレナという読み方も多くの人が知っていて特に不便なことはありませんし、もはや市民権を得ているといってもいいわけです。そういうわけで名前の読み方は、「正しいかどうか」が最も基本的なことではありますが、実際には人が常識的に読めるか、社会生活で支障が出ないか、ということがさらに重要になってくるのです。