実は7兆円も払いすぎている公的年金給付

さて、冒頭の記事において、今年の物価下落は-0.2~0.3%としつつも年金額を-1%とする可能性を示唆している理由は「過去のカット漏れ」があるからです。

先ほども、昨年は物価が-0.7%でも年金額は-0.4%だったと述べましたが、実際に物価下落時に年金カットをしていない積み残しがたくさんあるのです

この10年については物価は下がり続けています。ガソリンなど一概に下がっているとはいえないモノもありますが、全体の傾向はデフレ基調にあります。

先ほど述べたとおり、実質的に年金カットを行ったのはごくわずかで、今まではずっと年金カットを先送りしていました。その結果は大きく、年金が払いすぎの状態になってからの積み残しは莫大なものになっています。

その差は2.5%にも広がっています。そして、その累計は7兆円にもなってしまったことが明らかになっています(社会保障審議会年金部会の資料や、ニュースによる)。本来はもっと減額する宿題があるのですが、今、国の年金改正で議論されているのは、デフレであろうともきっちり年金額を減らすべきだというものです。

すでに、年金を受けているすべての受給者が対象になる意義は大きい

こうした年金額カットは、とても重要な取り組みですが、困難さもあります。

なぜなら、年金改正の影響は、「これから年金をもらう人」にのみ生じるのが普通だからです。年金をすでに受けている人の年金額を安易に減らすことは財産権の侵害にあたる可能性があり、実施は難しい問題です。

しかし、今回解説したとおり、物価の変動に伴い調整すべき分を正しく調整し直すことは財産権を侵すものとはいえません。むしろ、過払いの状態になっているわけですから、返還を求めてもおかしくないものです(国が分かっていて過払いしたわけですから、過去の過払いを返して欲しいという予定はありません)。

今回の年金額カットは、年金制度の安定性を高め、無用の負担を後代に押しつけないためにも必要な措置といえます。

すでに年金を受けているすべての受給者がカットの対象になるということはとても重要なことです。すでに50兆円を超えている年金給付は国の財政も揺るがす大きな問題となっています。先ほどわずか0.4%でも国(文部科学省)の宇宙開発予算に匹敵すると指摘しましたが、一人一人の年金生活者の年金額をごくわずか、適切にカットするだけで、国の予算上は大きなインパクトがあるわけです。

よく、こういう引き下げニュースとなると「お年寄りがかわいそうだ」という話が出ますが、そのツケを毎年数兆円の追加負担を押しつけられる現役世代もそれ以上にかわいそうです。本来の給付以上にもらっているわけですから。浅い感情論を混ぜないことが大切です。

なお、個人ベースでいうと、昨年の年金額0.4%マイナスは国民年金の満額で毎月267円、厚生年金の標準的年金額でも毎月944円の引き下げです。家計に与える影響は、ほんの少しの消費を控えれば十分にカバーできる範囲ではないでしょうか(それが積み重なると国家レベルでは数千億円になる!)。

来年の年金額は議論は行われても、今年の物価下落分のみ引き下げするか、若干の上乗せをする程度で引き下げの範囲はとどまると思われます。

しかし、本当は、1%以上引き下げるべきだということは覚えておきたいものです。


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