きびしい「冬の時代」が続いています
厳しい経済状況が続きます
ご承知のように日本では戦後、不動産の価格は1980年代のバブル期まで右肩上がりに上昇を続け、それに伴って家賃も上がり続けました。ところが90年代に入ってバブルが弾けると、地価は一転して下落に転じ、10年以上もの期間それが続きました。
その流れが一時的に逆転したのが2000年代半ばのことです。世界的な好景気と地価上昇の流れを受けて、日本でも「平成バブル」と言われた地価と賃料の上昇が起きました。けれども平成バブルはほんの数年で終わりを告げ、それ以降は不動産取引においても賃貸においても市場は低迷し、オーナーさんにとってはきびしい「冬の時代」が続いています。
この冬の時代の次に、果たしてどんな時代がやってくるのでしょうか。できればまた新たな春が訪れてほしいものですが、残念ながら時代の流れを見る限り、それは望み薄と言わざるをえません。賃貸経営を取り巻く環境はますます悪化しつつあります。冬の時代よりもさらにきびしい「氷河期」の到来が、目前に迫っているのです。
人口減少の影響も顕著に
不動産業界は内需中心で成り立っています。売るのも買うのも使うのも、全て日本国内です。世界を見れば中国やインドなど新興国の経済が急速に成長していますが、いくら新興国の経済が成長して購買力が上がっても、不動産は輸出できません。不動産業界の活気は、日本の内需がどれくらい盛り上がるかにかかっています。内需は短期的には景気の動向に左右されますが、長期的には国の経済構造や社会情勢を反映して変化していきます。日本の経済情勢に目を向けると、既に高度経済成長の時代は終わり、今後は低い経済成長率が続くと見られています。さらに大きな流れとして少子高齢化の進行と人口の減少という問題が影を投げかけています。
戦後、ずっと増え続けていた日本の人口が初めて減少に転じたのは、2005(平成17)年のことでした。それから数年は横ばい状態でしたが、2010年代に入ってから人口は毎年、確実に減り始めることになります。その減り方もどんどん加速していきます。これから日本の人口は減少まっしぐらなのです。
人が増えれば土地は足りなくなりますが、人が減れば余ってきます。既にその兆候は現れています。総人口の減少以前に、少子化の進行によって、賃貸住宅の借り手となる若い世代の数が減ってきたからです。
かつては需要に対して供給が不足気味で、貸し手にとっては殿様商売であった賃貸業界ですが、若い世代の減少とともに供給過剰がはっきりしてきました。地方ではこの傾向が著しく、現在、空室率は全国平均で20%近くにも及んでいます。
地方の農村では若い世代が減ってしまって、不動産のニーズがないのです。オーナーさん同士が入居者を奪い合う状況が生まれ、ダンピング競争が始まっています。この値下げ競争は家賃だけでなく礼金や敷金にもおよび、地方では既に礼金0、敷金0のいわゆるゼロゼロ物件が普通になっています。地方における賃貸経営の経営状況は悪化する一方です。
本格的な人口の減少が始まれば土地に対する需要は一段と減り、地価はさらに下がります。既に地域によっては、「土地代ゼロ」という物件すら出てきています。人口減少に苦しむ市町村が、「タダで提供しますから、どうかお住まいになってください」と土地、あるいは建物までも無料で提供しているのです。
無料で不動産が提供されている地域で、お金をとって行う賃貸経営は成り立ちません。まさに「大家さん不遇の時代」といえます。