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【取材レポート】オシャレを楽しめる介護エプロン

介護が必要になったからと言って、女性がオシャレについての興味をすべて失ってしまうわけではありません。メイクをしたり、お気に入りのファッションに身を包むことで、気持ちが若返り、明るく元気になったという話もあるぐらいです。今回は、介護エプロンのイメージをガラッと変える、お洒落な介護エプロンをご紹介します。

横井 孝治

執筆者:横井 孝治

介護・販促プロモーションガイド

オシャレをすると明るい気持ちに

オシャレは笑顔の原動力になります

オシャレは笑顔の原動力になります

私の母は元々、自分の身なりには気を遣うほうでした。メイクにもそれなりの時間をかけていましたし、ファッションについても母なりのこだわりを持っていました。しかし、2002年に統合失調症と認知症の合併症状で精神病院に入院。精神的に不安定なときは、自分の身なりに構う余裕もありません。メイクをしないのは当然ながら、髪は伸び放題、着の身着のままといった状態に。オシャレだった姿を知っているだけに、母に会うたびに切ない気持ちになったものです。

その後、精神的にある程度落ち着いてきたら、再び身なりを構うようになり、病院からの外出時には新しい服をねだるようになりました。当時の主治医に聞いたところ、これは年齢にかかわらず女性の患者さん全般に言えることのようで、精神状態が安定していたり、前向きな気持ちになっているときはオシャレをしたがるとのこと。逆に言えば、気分が落ち込んでいるときにオシャレをさせてあげると、明るい気持ちになりやすいとのことでした。

介護の世界でも同じことが言えるかと思います。いつもキレイな身なりをしたお婆ちゃんは、表情も生き生きとしているように感じますよね。
 

オシャレな「プレタ介護エプロン」を
開発・販売する株式会社笑顔音

ブラウスのようなデザインで、外出時でも違和感のない「プレタ介護エプロン」

ブラウスのようなデザインで、外出時でも違和感のない「プレタ介護エプロン」

株式会社笑顔音は、年齢を重ねていくうちに増えてしまう身体の不自由さのため、従来なら諦めざるを得なかった「装う喜び」を、いくつになっても諦めなくてすむようにしたいとの思いで設立されたアパレルメーカー。社長の菊本さんは、30年以上のキャリアを持つプレタポルテ(高級婦人服)のファッションデザイナーです。

現在の主力商品は、試行錯誤を繰り返しながら独自開発した「プレタ介護エプロン」。一般的な介護エプロンが食べこぼしなどの汚れを防ぐことが目的としており、デザインや色柄に力を入れていないのに対し、要介護者自身が「こんなにオシャレなエプロンなら着てみたい」と思ってもらえるよう、機能性とデザイン性の両立にこだわったそうです。

「プレタ介護エプロン」ならではのこだわりポイントとしては、次のようなものが挙げられます。

1.ブラウスのようなデザイン

汚れ防止メインに作られた一般的な介護エプロンと違い、「汚れ付着に強い洋服を作る」という逆転の発想から生まれたデザイン。エプロンを着けていることを恥ずかしく感じるのではなく、外出先などでもオシャレ感覚で楽しく過ごせるよう、普通のブラウスのようなデザインにこだわっています。

2.着脱のしやすさ

動きにくくなった腕を通しやすいようにアームホールを大きくあけ、片側はボタン留めにするなど、着脱や着心地に関してさまざまな工夫をしています。衿あきも状態に応じて後ろあき、前あきなどタイプが選べます。

3.お手入れのしやすさ
元々がシワになりにくく、手洗いや洗濯機でのネット洗いが可能なポリエステル素材に、撥水加工を実施。汚れの付着を最小限に抑えています。

4.立体裁断

10年におよぶ介護経験を持つパタンナーが、立体裁断で型紙を作成。着やすさ、動きやすさ、美しいフォルムを、欲張りに追求しています。
 

【インタビュー】積極的に着てみたくなる服を作りたい

「高齢者の方々に、オシャレを諦めないでほしい」と語る、株式会社笑顔音の菊本社長

「高齢者の方々に、オシャレを諦めないでほしい」と語る、株式会社笑顔音の菊本社長

介護とオシャレという、これまでに無かったような組み合わせを追求する株式会社笑顔音は、何を考えて生まれ、何をめざしているのでしょうか? 菊本社長に、気になる部分を直接伺いました。

横井「そもそも、笑顔音を立ち上げたきっかけは?」
菊本社長(以下、菊本)「私の父が、10年ほど療養病床に入っていたことがあるんです。最初のうちは『看護師さんやヘルパーさんたちも、もっと○○してくれればよいのに』なんて、家族の立場で不満に思うことが多かったんですよね。でも入院が長引き、看護師さんやヘルパーさんの大変さがわかってくると、一方的に相手を責めるのもダメなように思うようになりました。そんなとき、着脱がラクな服があれば、介護する側とされる側、両方の負担を減らせるんじゃないかなと考えたんです」
横井「まずは服の機能改善を考えたわけですね」
菊本「そうです。その後、自分なりに勉強したり、さまざまな方と出会うなかで、食事の際に高齢者の方が小さい子どものようなエプロンを着けられていることを知ったんですね。それも自分の意志ではなく、服を汚さないように『着せられる』といった感じになっていることを」
横井「確かに、介護エプロンを自ら着用したいと考える高齢者の方は、あまり多くないかもしれませんね」
菊本「で、その介護エプロンのデザインを依頼されることになって。私がやるのなら、高齢者の方自身が『積極的に着てみたい』と思ってくれるエプロンを作れないかなって考えたんです。それ以降、多くの人に助けてもらいながら会社を立ち上げ、今に至ります」
横井「『積極的に着てみたい』エプロンの条件とは?」
菊本「まず第一にオシャレであること。特に女性の場合、いくつになってもオシャレをしたいものなんです。でも、今までは『汚してはいけない』『身体が動かしにくいから、ジャージのような服しか着られない』といった理由から諦めざるを得なかったんですね。高齢者の方にも似合うデザインで、汚れに強くて、着脱がしやすければ『着てみたい』と感じてもらえます」
横井「なるほど。では、創業してからこれまでに、印象に残っていることは?」
菊本「やっぱり、ユーザーの方からの反響ですね。90代の女性がデイサービスで『プレタ介護エプロン』を着用したところ、かわいいと評判になってご本人も大喜び。後日、家族の方からほしいものを尋ねられた際に『あのエプロンの色違い・柄違いが欲しい』と言ってくださったことがあって、会社を作って良かったなぁと思いましたね。それ以外にも、購入いただいた方々から感謝のメッセージをいただくたびに、どんどん気合いが高まります」
横井「これからの取り組みは?」
菊本「『プレタ介護エプロン』だけでなく、高齢者の方が着やすい、機能的でオシャレなファッションを充実させていく予定です。現在、高齢者の方に着ていただくだけでなく、私たち自身が将来『着たい』と思う服を作っていきたいですね」

ファッションデザイナーとしての豊富なキャリアと自らの介護体験を生かして、新たな商品ジャンルを切り開いている菊本社長の言葉からは、「オシャレを通して、1人でも多くの高齢者の方に笑顔になってほしい」という思いが伝わってきました。
 

今後の商品ラインアップの拡充にも注目!

ァッションを通して笑顔のネットワークを広げることをめざす笑顔音

ファッションを通して笑顔のネットワークを広げることをめざす笑顔音

「笑顔音という社名は、『着る人が笑顔になるファッションを作りたい。そして笑顔のネットワークを広げていきたい』という思いを込めたものなんです」と教えてくれた菊本社長。「プレタ介護エプロン」シリーズの充実だけでなく、よりファッション性を高めた商品展開も考えているそうです。その名も「サポートプレタ」。介護とオシャレの融合という狙いがストレートに伝わってくるネーミングです。これからの展開がますます楽しみですね。

株式会社笑顔音の企業サイトは、こちらへ。

「プレタ介護エプロン」について、詳しくはこちらへ。


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