不妊症/女性不妊の原因・検査法

炎症と不妊についての関係について

先日、沖縄のハートフルクリニックという代謝栄養療法を積極的に行われている平良先生と京都の不妊治療専門クリニックの田村秀子先生が対談される機会があり、私も同席をさせて頂きました。

執筆者:池上 文尋

先日、沖縄のハートフルクリニックという代謝栄養療法を積極的に行われている平良先生と京都の不妊治療専門クリニックの田村秀子先生が対談される機会があり、私も同席をさせて頂きました。

栄養のこと、免疫のこと、食生活のこと、精神疾患のことなど様々なテーマでお話が進みましたが、最も印象的だったのが、炎症についての話です。

田村秀子先生曰く、子宮や卵管に子宮内膜症やクラミジアが原因で慢性的な炎症があると妊娠しにくいのはもちろんだし、それ以外でも子宮や卵管、卵巣では炎症が起きていることがある。
炎症

子宮内膜症は慢性的な炎症性疾患と言えます。


それをどのように見つけて、炎症の元になるものを見つけて、治していくか、それが妊娠率に影響すると思うとのコメントでした。(秀子先生はかなり前からその部分に着目した治療を行われているそうです)

最近、オーストラリアの大学が論文発表しましたが、歯周病を持っている方は妊娠までの期間が長くなってしまうということで、これも口内の慢性の炎症が及ぼす影響と考えられます。

さて、ここで炎症についておさらいしてみましょう。

炎症とは?

細菌やウイルス、外傷などの物理的作用、また薬物などの化学的作用により起こる生体の防御反応で、発熱、発赤、腫脹、疼痛などの症状があります。

メカニズムとしては発赤や熱感は当該部位の血管が拡張することにより生じる血流の増加が原因になります。また、腫脹・疼痛は血管透過性が亢進して浮腫ができたり、C線維を刺激することで内因性発痛物質が出現し、痛みにつながります。

炎症には2つあり、急性炎症と慢性炎症に分けることができます。

急性炎症とは、急激に発症し、早期に終息する炎症反応のことを言います。
慢性炎症とは、急性炎症の原因物質がうまく処理されずに炎症反応が長びく場合や、炎症が緩やかに発症して長期にわたって炎症反応が持続する状態です。  

慢性炎症と不妊 

女性の場合、月経は一種の急性炎症と言えます。しかし、それは月経時の数日で収まります。

不妊治療について調べてきて、特に気になるのは慢性的な炎症と不妊との関係です。

生殖系の臓器が慢性的な炎症を持つ場合、例としては子宮内膜症や月経困難症の場合、それらが不妊の原因になっていることは明らかですし、クラミジアに感染して治療せずに放置しているような場合も卵管が炎症を起こしているので妊娠しづらいのは想像にたやすいことです。
炎症

炎症の特徴は発赤、発熱、疼痛。腫脹などです。


また、子宮や卵巣以外でも蓄膿症やアトピー性皮膚炎、喘息やリウマチなども長期にわたる炎症性の疾患も妊娠に影響を与えると考えられます。身体のどこかに持続的に炎症を持っていることは免疫的に活性が高いと推測されるからです。

免疫が亢進していると生殖系の細胞にとってデメリットになることが多いと考えられます。特に精子は女性の身体にとってウイルスや病原菌同様、異物でしかありません。

SEXをすれば、排卵期には様々なメカニズムで精子を速やかに卵管膨大部まで移行を助けるのですが、免疫の活性が高く、その壁が厚いとひとたまりもありません。そこには抗精子抗体という切り口だけではわからないミクロの世界での攻防があるような気がしています。

よって、田村秀子先生の言われるように生殖器はもちろんだが、全身的に炎症がないかどうかをサーチして、それを的確に治療していくのは妊娠率を上げることに対し理にかなっていると思うわけです。

炎症の起きやすい身体と食生活の関係

平良先生のお話の中では食べるものにより、炎症が起きやすい身体になることを指摘されていました。その中心となる食品がトランス脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、天然の植物油にはほとんど含まれず、水素を付加して硬化した部分硬化油を製造する過程で発生するため、それを原料とするマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどに含まれ、ファーストフードの食品にも使われることが多いようです。
炎症

マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が健康被害を与える可能性が指摘されています。


多量に摂取するとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、2003年以降、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えています。

もともと脂肪酸は、生物学的には生体を構成する細胞膜の基本成分です。

私達の体を構成する細胞膜の脂肪酸は、免疫学的には炎症や免疫を促進(抑制)する局所ホルモンであるプロスタグランジン系の原材料となります。

ところが、トランス型脂肪酸は生体内でプロスタグランジン系を作る元として使うことができません。そのためにトランス型脂肪酸を含む細胞膜は局所での炎症反応の調節に障害が起きる可能性があります。

要するに炎症しやすい身体になってしまうのです。トランス脂肪酸とアトピーの関係も示唆されていますし、クローン病などの疾患とも関係していると言われています。

よって妊娠を希望される人にとってはトランス脂肪酸は摂取してはいけない食品だということがご理解いただけたかと思います。

まとめ

今回は先生方の対談から今までとは違う切り口で書いてみました。

食生活に気をつけようと言われても具体的にどうすればいいんだという話もありますが、今回の内容から食べてはいけないものを明確化することも大事なことが分ります。

私も以前はマーガリンのたっぷり入ったパンが好きで買って食べていましたが、トランス脂肪酸について詳しくなってからは一切口にしていません(笑)

体内の炎症についても少し認識が変わったのではないでしょうか?
慢性的な炎症を持っている方はその原因となっているものを取り除き、その炎症を収めることが妊娠率を高めることに結び付くことを理解して頂けたら幸いです。

<参考にさせて頂いたサイト>
植物性人工脂肪のトランス脂肪酸は健康の敵(オールアバウト食の安全)
http://allabout.co.jp/gm/gc/298596/

トランス脂肪酸の過剰摂取は胎児死亡のリスクを高める(妊娠しやすいからだづくり)
http://www.akanbou.com/news/news.2007122801.html

トランス脂肪酸を摂り過ぎると不妊になりやすくなる(妊娠しやすいからだづくり)
http://www.akanbou.com/news/news.2007011301.html

脂肪の摂取と子宮内膜症の発症リスクとの関係(妊娠しやすいからだづくり)http://www.akanbou.com/news/news.2010032501.html

<お世話になった先生>
田村秀子先生(田村秀子婦人科医院)
http://tamura-hideko.com/doctor.html

平良 茂先生(ハートフルクリニック)
http://www.heartfulclinic.com/

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