かつての陸軍飛行場跡地が
独自の街作りに大きく貢献
県立柏の葉公園近くの標識。敷地内には長さ1500m、幅60mの滑走路が設けられていた
この街を知る上で欠かせないのは、昭和初期、柏は軍都と呼ばれ、陸軍の飛行場や高射砲部隊など、大規模な施設があったということでしょう。その飛行場跡地は戦後、アメリカ軍の通信所となり、昭和54年に返還。現在は千葉県立柏の葉公園や東大柏キャンパス、国立がん研究センター東病院、科学警察研究所、柏の葉公園住宅などとなっています。キャンパス駅という独特な名称や現在の公民学の連携といった街の方向性決定にかつての飛行場跡地が大きく貢献しているのです。
駅から望むと緑の濃いエリアの中心が柏の葉公園。休日を過ごすには楽しい場所だ
ちなみに、それ以前のこの地ですが、江戸時代には徳川幕府の軍馬を飼育するための小金牧という広大な牧場があり、現在の柏の葉キャンパス周辺はそのひとつ、高田台牧。往時は馬が逃げないようにあちこちに土手が築かれていたそうです。その後、明治時代に牧場は農地として開墾され、やがて軍都となり、現在の姿に。平成17年のつくばエクスプレス開業以前から、変化の大きな場所だったわけです。
秋葉原から区間快速利用で30分。静かで、揺れの少ない走行が特徴のつくばエクスプレス
柏の葉公園を中心にしたエリアとちょっと違った経緯を辿ったのは柏の葉キャンパス駅周辺。ここには昭和36年にオープンした柏ゴルフ倶楽部があり、現在開発が進められているのはその跡地。平坦で広い土地があったことが、大規模な計画を可能にしたのです。
東側にはマンションに街作りの拠点、
少し離れて国道16号が
駅西側のマンション。来るたびに子どもを連れた家族の姿が増えているのを実感する
では、実際の街を見ていきましょう。つくばエクスプレスを挟んで東側は駅構内からも見える通り、この街でもっとも早い時期に開発されたマンションエリアで、タワーを含む、5棟が建てられています。
柏の葉アーバンデザインセンター。街作り、環境問題、子育てから健康、医療その他、ここから発信される情報は幅広い
ロータリーを挟んで建っているのが、公民学連携というこの街の開発の基本理念を象徴、街作りの拠点となっているUDCK(柏の葉アーバンデザインセンター)。ここでは街や暮らしのあるべき姿を考えるイベントや学習プログラム、社会実験など多岐にわたる活動を展開しており、取材時には「柏の葉・流山いろんな乗り物"街乗り!"シェアリング」なるイベントが行われていました。街全体で車やバイクなど多種の乗り物をシェアリングするという試みです。また、駅前で見かけた植栽もこうした活動のひとつでした。
ただ、まだ開業から時間が経っていないこともあり、ロータリーから離れると国道16号までは空き地、古くからの住宅などが点在している状況。それでも駅に近い場所から少しずつ賃貸住宅などが増えています。また、16号を越えた地域には30年近くまえに分譲された大規模な一戸建てエリア、柏ビレジがあります。ここは建築家の故宮脇檀さんが計画に加わった赤レンガと緑が特徴な街です。
20004年にオープンした16号沿いのモラージュ柏。周辺には大型店が集まっている
16号の北側には常磐自動車道の柏ICがあり、そこから柏にかけてのロードサイドには飲食店や大型家電量販店、スーパーにショッピングセンターなどが点在。週末には家族連れで賑わいます。いろいろな店舗があるので買い物には困りませんが、柏IC~国道6号までの区間を中心にして、休日昼間などに渋滞が発生することもあります。
西側には商業施設に公園、大学……。
話題の「スマートシティ」が建設中
駅西側にあるららぽーと柏の葉。スーパー、レストランなどは夜10時までの営業している
続いて西側を見てみましょう。ロータリーの左側には大型商業施設ららぽーと柏の葉があり、スーパーから各種のショップ、映画館、スパなどが集まっています。中央のガラスのアトリウムが印象的な建物には屋上庭園や太陽光、風力発電なども。遊ぶつもりになれば、1日楽しめる場というわけです。
ロータリーから現在開発中のエリア、さらに既建設エリアを見たところ。駅前からは羽田空港行きのバスも出ている
ロータリー右手では現在、オフィス、商業施設、ホテル、賃貸住宅からなる複合的な街作りが進められており、その向こうにはタワーを含むマンション群が続いています。この街は最近話題になっているスマートシティを目指しており、地域全体の発電量、受電量、消費電量を一元管理する仕組みが採り入れられるほか、高齢化や新産業創設など幅広い視点から、現状の都市、生活の問題解決を図る取組みがあるとのこと。率直なところ、取り上げられている課題とその範囲はとても書ききれないほど広範に及んでおり、非常に先進的。2014年春の完成が楽しみです。
柏の葉公園周辺を走るランナーたち。歩道が広く取られているので走りやすい
ロータリーを越えると、以遠は一気に緑が濃くなり、研究施設、研修施設、公園などが広がるエリアに。駅から柏の葉公園までは歩いて15分ほどでしょうか。並木のある歩道は広々と作られており、公園に近づくにつれ、ランナーも多く、気持ちの良い空間。公園内には野球場、総合競技場に池やバーベキュースペース、ドッグラン、茶室などがあり、休日はお弁当を広げる家族も多い、憩いの場です。
■今回取り上げたエリア周辺の位置関係は?
つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅周辺。記事中に出てくる幹線、施設などを記載してある。作成方法については別途記載
続いて
つくばエクスプレス柏の葉キャンパスの住宅事情を見ていきましょう。