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10月で10周年の401kが実はすごい!(2ページ目)

10月1日で日本版401kこと確定拠出年金が10周年を迎えます。各紙でコメント、執筆等していますが、本当に言いたいことすべてAllAboutで語ります。実は401kのインパクトは記事に書かれていないところにある!

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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400万人が受給権を手にしたという変化

また、他に私が指摘したいポイントとして、401kを利用する400万人は、「受給権」を手に入れたということがあります

この10年間、企業年金は実は保証が不確かな制度になってしまいました。資産運用を安定的に稼ぐことが難しくなったため、積立不足を抱えた企業年金が増え、制度全体を存続させていくために、給付を減らすことが行えるようになったからです。また、やむをえない状況に至って、解散の道を選択する企業年金も出ています。
例えば、公的資金を受けたJALは事業再建の中、企業年金を現役社員もOBも減額しています。現役社員はいきなり給付の約束が半分になる、厳しい減額を受け入れたとされています。

実は、401kはそうした企業の都合に振り回されない制度となっています。自己責任で運用をしなければいけない見返り、というわけではありませんが、減額のリスクがきわめて低い制度になっているのです。

まず、勤続3年を経過すれば、会社は401kの財産について一切手をつけることができません。会社の資金のやりくりに勝手に流用することはできません(退職一時金ではよくある)。ましてや、経営再建のやむなきに至ったからという理由で数割カットすることもできません。

ちなみに、3年以上働いていれば、自己都合でやめても1円もカットされません。キャリアアップを目指して、あるいは会社の考え方と合わないからと転職をすると、数割カットされるのが退職金や企業年金の常識ですが、日本版401kではそうしたルールが通用しないのです。

実はこれはとても重要なことが確立したといえます。私たちが働いた労働力が原資となって積み立てられている老後の大切な資産が、会社の都合で減らされることが一切なくなったということを意味しているからです。

今のように、企業の業績が不安定で、倒産もしばしば起こる時代において、退職金・企業年金の保全体制は重要です。景気が良かったご時世なら、ひとつの会社がつぶれても、次に働いた会社で取り戻そう、なんていうことも可能でしたが、今はそんな余裕はありません。

実は、10年をかけて、400万人の老後資産の保全体制が整った、というのも、日本版401kの10年を振り返ったときの大きなトピックなのです。
ニュースではあまり書かれないテーマですが、会社員の読者の皆さんは覚えておいてほしいと思います。

もちろん課題もあるが、まだまだ発展の余地あり!

もちろん日本版401kに課題もたくさんあります。
1つは「個人型401k」の不人気でしょう。10年間で10万人程度というのはいかにも少なすぎます。対象者は3500万人はいると推定されているからです。国民年金基金連合会というところが所管しているのですが、国民年金基金と個人型401kが競合商品でありPRに熱心でないこと、手数料がかかるが税制上のメリットが有利というのはまだ国民に分かりにくいことなどが理由と思われます。ただし、アメリカの例をみれば、個人型401kの普及はほぼ間違いなく、今後の発展に期待したいところです。

また、2つめとして残高の少なさがあります。401k全体でも5兆円前後とみられており、日本最大の企業年金である確定給付企業年金の42兆円と比べれば8分の1です。ビジネスとして考えれば金融機関としては20兆円くらい期待したかったかもしれません(これも高望みすぎだったと思いますが)。ただし、401kについては今後とも残高の伸びが確実です(解散や減額の可能性がほとんどないうえ、新規採用等は今後も続くため)。伸びしろは確定給付企業年金より大きいと思われます。一気に逆転は難しくても、それなりに近づくことは考えられます。

3つめとしては、投資教育の限界です。400万人に投資教育を実施したことの意義は大きいのですが、それでも投資教育をやっても、理解が及ばない層のあることが明らかとなっています。これはアメリカでも明らかになっており、対策が講じられました。日本でも、教育の重要性が薄れるわけではありませんが、同時に教育の限界についても議論が必要になるでしょう。

しかし、それよりも、今後の発展の余地が多いところに目を向けて欲しいと思います。
まず、401kをこれから採用する企業は、大企業も中小企業も今後増えると考えられます。今まで10年は見送ってきたけれど、導入に踏み切ると思われる企業がまだあるからです。これ以上景気の低迷が続くようであれば、企業年金の維持が負担であるため、全面401k化ということも考えられます。ベンチャー企業などでは、最初の企業年金として401kを好む傾向があります。

先に述べたとおり、401kを廃止することはほとんど意味がないため(全社員を対象に個人型401kを管理しなければならない)、401kは減らないでしょうし、年金受け取りする人もまだ多くないため、残高も確実に増えていくことでしょう。

そして、実はこの10年で、もっとも規制緩和の多かった企業年金制度も日本版401kでした。毎月の拠出限度額という規制は、10年前と比べて+40%もこじあげられました。各種規制緩和も何度も行われています。使い勝手の悪い部分に積極的にメスが入り、改善が続けられています。おそらく今後もそうした見直しが行われるものと思われます。

■   ■

今よりも利用者が増え、500万人~600万人が401kの対象となってきたとき、単に「はやっていない制度」というのではなく、もっと違った目で401kが注目されるといいなと思います。
おそらく、そのときは、ここで述べた「400万人に投資教育の価値」「400万人の老後資産保全体制の確立」というキーワードがもっと注目されてくることになるでしょう。

確定拠出年金制度は、10周年を順調に迎えたと私は考えています。そして次の10年も発展が期待される制度と考えられます。

まずは10周年を祝いたいと思いますし、また次の10年もその発展に関わっていければと思います。マスメディアの皆さんもぜひ、「前向きに401kの10周年を考える」記事をもっともっと書いて欲しいなと思います。
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